「補助金」と「助成金」の違いを一言で言うと、補助金は「審査がある競争制」、助成金は「要件を満たせば原則もらえる制度」です。AI導入においては、まず助成金(人材開発支援助成金)で研修を実施し、次に補助金(デジタル化・AI導入補助金やものづくり補助金)でツール・設備を導入する——この段階設計が最も合理的です。
「補助金と助成金って何が違うんですか?」——生成AI総合研究所に相談に来る中小企業の経営者から、この質問をほぼ毎回受けます。両者は似た名前で、どちらも「国からもらえるお金」「返さなくていいお金」という点では同じです。しかし、管轄省庁、申請の仕組み、「もらえる確率」がまったく異なります。この違いを理解しないまま申請を始めると、「申請したのに対象外だった」「要件を知らなくて不支給になった」という事態に陥ります。
中小企業基盤整備機構の2026年3月調査によると、中小企業の「AI補助金」への関心は年々高まっています。しかし、弊社の日常的な支援の中では「補助金と助成金を混同している経営者が大半」という実感です。IT導入補助金を労働局に問い合わせたり、人材開発支援助成金をjGrantsで探したり——こうした「そもそもの窓口間違い」は珍しくありません。
本記事では、補助金と助成金の7つの違いを比較表で整理し、AI導入で使える補助金3選と助成金3選を具体的な金額とともに紹介します。さらに、自社の状況(従業員数・目的・投資額)から最適な制度を選べるフローチャートも提供します。
この記事でわかること
– 補助金と助成金の7つの違い(管轄・財源・審査・採択率・金額・報告・返還)
– AI導入で使える補助金3選と助成金3選(金額・対象・申請方法)
– 従業員数・目的・投資額で最適な制度がわかる判断フローチャート
– 補助金と助成金の併用方法(異なる経費に対する「二重取り」)
– 「まず助成金→次に補助金」の段階設計と成功事例
目次
- 補助金と助成金の7つの違い——比較表で一目瞭然
- 違い①:管轄省庁——経産省と厚労省で申請先がまったく異なる
- 違い②:財源——なぜ助成金は「もらいやすい」のか
- 違い③:審査の仕組み——競争制 vs 要件制
- 違い④:採択率——37.5% vs ほぼ100%
- 違い⑤:金額——規模感が大きく異なる
- 違い⑥⑦:報告義務と返還リスク
- AI導入で使える補助金3選——設備・ツール導入に使う
- AI導入で使える助成金3選——研修・人材育成に使う
- 判断フローチャート——3つの質問で最適な制度を特定する
- 補助金と助成金の併用——異なる経費に対する「二重取り」が可能
- コスト・補助金情報
- 導入事例——「まず助成金→次に補助金」で成功した企業
- 導入ステップ——補助金・助成金の活用を始めるために
- 失敗パターンと回避策
- 読者の疑問に答える——補助金と助成金で迷う声
- まとめ:「まず助成金、次に補助金」が失敗しない王道パターン
補助金と助成金の7つの違い——比較表で一目瞭然
まず結論を示します。補助金と助成金の違いを7つの軸で整理しました。
| 比較項目 | 補助金 | 助成金 |
|---|---|---|
| ①管轄 | 経済産業省・中小企業庁 | 厚生労働省 |
| ②財源 | 国の一般会計(税金) | 雇用保険料 |
| ③審査 | あり(競争制・書類審査) | 要件充足で原則支給 |
| ④採択率 | 制度による(ものづくり約37.5%) | 要件を満たせばほぼ100% |
| ⑤金額 | 大きい(数十万〜数千万円) | 小〜中程度(数万〜数百万円) |
| ⑥報告 | 事業完了後に実績報告(詳細) | 訓練終了後に支給申請(比較的簡易) |
| ⑦返還リスク | 要件未達時に返還の可能性 | 不正受給時に返還+加算金(20%) |
出典:中小企業庁「補助金の概要」、厚生労働省「事業主の方のための雇用関係助成金」を基に作成
この7つの違いの中で、AI導入の実務において最も重要なのは「③審査の有無」と「④採択率」です。補助金は申請しても不採択になる可能性がありますが、助成金は要件を満たせば原則として受給できます。
弊社がすべてのクライアントに最初にお伝えするのは「まず助成金(人材開発支援助成金)。話はそれから」という判断フレームです。助成金は要件充足で確実に受給できるため、計画が立てやすく、リスクが低い。研修を通じて社員のAIリテラシーが上がると、次の補助金申請の計画書もスムーズに作成できる。いきなり補助金でAI設備を入れても、使いこなせる社員がいなければ宝の持ち腐れです。
では、7つの違いを一つずつ掘り下げます。
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違い①:管轄省庁——経産省と厚労省で申請先がまったく異なる
補助金の多くは経済産業省(中小企業庁)が管轄しています。代表的なものがIT導入補助金(2026年度からはデジタル化・AI導入補助金)とものづくり補助金です。これらは「企業の生産性向上」「DX推進」「イノベーション」を目的とした制度で、設備投資やソフトウェア導入に充てるお金です。
一方、助成金の多くは厚生労働省が管轄しています。代表的なものが人材開発支援助成金です。こちらは「労働者のスキルアップ」「雇用の安定」「人材育成」を目的とした制度で、研修費用や賃金助成に充てるお金です。
管轄省庁が異なるということは、申請先も異なるということです。
| 項目 | 補助金 | 助成金 |
|---|---|---|
| 申請先 | jGrants(電子申請システム)経由で中小企業庁へ | 都道府県の労働局へ |
| 申請方法 | 電子申請(GビズIDプライムが必要) | 紙の申請書を窓口に提出(一部電子化) |
| 問い合わせ先 | 各補助金の事務局 | 管轄の労働局 |
| 書類様式 | 制度ごとに異なる | 厚生労働省の統一様式 |
この違いを知らずに「IT導入補助金を労働局に申請してしまった」「人材開発支援助成金をjGrantsで探したが見つからない」という相談が弊社に来たこともあります。些細な違いに思えますが、初めての申請では混乱しやすいポイントです。
弊社のアドバイスは「まず自分がやりたいことが『研修』か『ツール・設備の導入』かを明確にする→研修なら労働局、ツール導入なら中小企業庁」です。この1つの判断で、窓口の間違いを防げます。
違い②:財源——なぜ助成金は「もらいやすい」のか
補助金の財源は国の一般会計(税金)です。国家予算から割り当てられた予算内で、申請者の中から優秀なものを選んで交付する仕組みです。予算には限りがあるため、すべての申請者に交付することはできません。これが「競争制」になる理由です。
助成金の財源は雇用保険料です。企業が毎月納めている雇用保険料の一部が、助成金の原資となっています。言い換えれば、雇用保険に加入している企業は、すでに助成金の原資を負担しているのです。
弊社がクライアントに「助成金の財源は雇用保険料です。社長が毎月払っているお金が原資です」とお伝えすると、「え、自分たちが払っているお金なんですか?」と驚かれることがよくあります。「使わないのはもったいない」——この感覚が、助成金の申請を後押しするきっかけになります。
財源が雇用保険料であるため、助成金は「要件を満たしたすべての企業に支給する」のが原則です。予算の上限はありますが、補助金のように「選別する」仕組みではありません。この構造的な違いが「助成金はもらいやすい」理由です。
違い③:審査の仕組み——競争制 vs 要件制
この違いが、補助金と助成金の「もらいやすさ」を決定的に分けます。
補助金は「競争審査」です。申請者の中から、事業計画書の質、課題の深刻さ、効果の見込み、加点項目の充足度などを審査し、上位の申請者に交付します。審査には外部の専門家が加わり、点数化した上で採否を決定します。
ものづくり補助金の場合、審査項目は「技術面」「事業化面」「政策面」の3カテゴリに分かれ、それぞれに複数の評価ポイントがあります。事業計画書の出来が悪ければ、たとえ良い投資計画であっても不採択になる可能性があります。
助成金は「要件審査」です。「○○の要件を満たしているか」を事務的にチェックし、満たしていればすべての申請者に支給します。人材開発支援助成金の場合、主な要件は以下のとおりです。
- 雇用保険適用事業所であること
- 計画届を訓練開始の1ヶ月前までに提出していること
- 訓練を所定の内容・時間で実施したこと
- 受講者に賃金を支払っていること
- 支給申請を期限内に行うこと
これらの要件をすべて満たせば、原則として支給されます。「計画書の質で点数をつけて選別する」という仕組みはありません。
弊社の経験では、助成金の「不支給」は「要件の見落とし」が原因であることがほとんどです。特に多いのは「計画届の提出期限に間に合わなかった」「受講者の出席記録が不十分だった」といった事務的なミスです。要件を正確に把握し、手続きを漏れなく行えば、不支給のリスクは極めて低いです。
違い④:採択率——37.5% vs ほぼ100%
補助金の採択率は制度・公募回によって異なります。
| 制度 | 採択率 | 出典 |
|---|---|---|
| ものづくり補助金(第22次) | 約37.5%(582/1,552件) | 中小企業庁 第22次採択結果 |
| デジタル化・AI導入補助金 | 60〜70%程度 | IT導入支援事業者の公表データより |
| 小規模事業者持続化補助金 | 50〜60%程度 | 中小企業庁 各公募回の採択結果より |
一方、助成金は要件充足で原則支給されるため、「採択率」という概念自体がありません。あえて言えば「要件を満たした申請者の支給率=ほぼ100%」です。
この差は、AI導入を計画する中小企業にとって大きな意味を持ちます。ものづくり補助金の採択率37.5%は「3社のうち2社は不採択」ということです。事業計画書の作成に2〜4週間を費やしても、6割以上の確率で「落ちる」。この不確実性を許容できるかどうかが、補助金を選ぶかどうかの判断ポイントです。
弊社のアドバイスは明確です。「不確実性を避けたいなら助成金から始める。不確実性を許容できるなら補助金に挑戦する」。そして多くの中小企業は「まず確実な助成金で成功体験を積んでから、不確実な補助金に挑戦する」という段階設計を選んでいます。
違い⑤:金額——規模感が大きく異なる
補助金は金額が大きい傾向があります。
| 制度 | 補助上限額 | 補助率 |
|---|---|---|
| ものづくり補助金 | 750万〜2,500万円 | 1/2〜2/3 |
| デジタル化・AI導入補助金 | 最大450万円 | 1/2〜2/3 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 50万〜200万円 | 2/3 |
助成金は金額自体は比較的小さいですが、「確実にもらえる」メリットがあります。
| 制度 | 助成内容 | 助成率 |
|---|---|---|
| 人材開発支援助成金 | 経費助成+賃金助成 | 経費75%(中小企業)+960円/時間 |
| 業務改善助成金 | 設備投資助成 | 3/4〜9/10 |
| キャリアアップ助成金 | 正社員転換助成 | 1人あたり最大80万円 |
金額の大きさだけで比較すると補助金が有利に見えますが、「もらえる確実性」を加味すると、助成金の「確実にもらえる数万〜数十万円」と、補助金の「37.5%の確率でもらえる数百万円」は、期待値で考えると意外に近い水準になります。
弊社が支援した金属加工メーカー(25名)の例で見ると、人材開発支援助成金で確実に受け取った助成額は約10.3万円(経費助成7.5万円+賃金助成約2.8万円)。小さく見えますが、10万円の研修費に対して10.3万円の助成を受けたので、実質負担はほぼゼロです。この「確実にゼロ負担で研修ができる」ことの意味は大きいです。
違い⑥⑦:報告義務と返還リスク
違い⑥:報告義務の重さ
補助金は事業完了後の「実績報告」が必須であり、報告書の内容は詳細です。ものづくり補助金の場合、支出した経費のすべてについて、見積書・請求書・納品書・振込記録を証拠書類として提出する必要があります。さらに、事業完了後5年間にわたって「事業化状況報告」を毎年提出する義務があります。
助成金は研修終了後に「支給申請書」を提出しますが、報告の負荷は補助金よりも低いです。研修の出席記録、カリキュラム、受講者名簿、経費の領収書——これらの書類を添付するだけで済みます。
違い⑦:返還リスク
補助金は、賃上げ要件の未達や、交付決定の条件に反した場合に返還が求められることがあります。ものづくり補助金では、5年間の報告期間中に付加価値額の年率3%以上の伸長が求められ、大幅に未達の場合は補助金の一部返還の可能性があります。
助成金は、不正受給と判断された場合に返還命令+加算金(受給額の20%)が課されます。さらに、企業名が厚生労働省のWebサイトで公表される場合もあります。不正受給のペナルティは補助金よりも厳しいです。
ただし、通常のAI研修を適正に実施し、手続きを正しく行っていれば、返還が求められることはまずありません。「不正をしなければ問題ない」——これが実務上の結論です。
AI導入で使える補助金3選——設備・ツール導入に使う
AI導入に活用できる主な補助金3制度を、概要・金額・申請のポイントとともに紹介します。
補助金①:デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | デジタル化・AI導入補助金(2026年度) |
| 対象 | AI搭載SaaSの導入(IT導入支援事業者が登録したツール) |
| 補助率 | 1/2(賃上げ条件で最大2/3) |
| 上限額 | 最大450万円 |
| 採択率 | 60〜70%程度 |
| 申請のポイント | IT導入支援事業者と連携、GビズIDプライムが必要 |
出典:中小企業庁「デジタル化・AI導入補助金」公募要領を基に作成
2026年度に名称が変更された制度です。AIチャットボット、AI-OCR、AI需要予測SaaSなどの導入に最も使いやすい制度です。IT導入支援事業者が申請手続きの多くをサポートしてくれるため、申請の負荷は低いです。
弊社が支援した工務店(15名)は、この制度でChatGPT APIを組み込んだ見積作成ツール(120万円)を導入し、補助率2/3で80万円の補助を受けました。見積作成時間を45分→15分に短縮し、月61時間以上の業務改善を実現しています。
補助金②:ものづくり補助金
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 |
| 対象 | AIシステムのカスタム開発、AI設備投資 |
| 補助率 | 1/2〜2/3 |
| 上限額 | 750万〜2,500万円(従業員数による) |
| 採択率 | 約37.5%(第22次) |
| 申請のポイント | 詳細な事業計画書(A4で10〜15ページ)+認定支援機関の確認書 |
出典:中小企業庁「ものづくり補助金」公募要領を基に作成
カスタムAI開発やAI検品カメラなどのハードウェアを含む設備投資に適しています。上限額が高く、数百万円規模の投資にも対応できますが、採択率が約37.5%と競争的であり、事業計画書の質が採否を左右します。
弊社が支援した製造業(30名)は、AI画像検品システム(450万円)をこの制度で導入し、補助率2/3で300万円の補助を受けました。不良率3.2%→0.8%と75%改善し、月50万円のコスト削減を実現しています。
補助金③:小規模事業者持続化補助金
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 小規模事業者持続化補助金 |
| 対象 | 従業員20名以下の小規模事業者 |
| 補助率 | 2/3 |
| 上限額 | 通常枠50万円(特別枠で最大200万円) |
| 採択率 | 50〜60%程度 |
| 申請のポイント | 商工会議所・商工会の確認書が必要 |
出典:中小企業庁「小規模事業者持続化補助金」公募要領を基に作成
従業員20名以下の小規模な企業に適しています。上限額は小さいですが、AIチャットボットの導入やAI搭載のPOSレジの導入など、小規模なAI投資に活用できます。
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AI導入で使える助成金3選——研修・人材育成に使う
助成金①:人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース) |
| 対象 | AI研修、DX人材育成研修、プロンプトエンジニアリング研修 |
| 助成率 | 経費75%(中小企業)+賃金助成960円/時間 |
| 上限 | 1人あたり経費上限50万円 |
| 採択率 | 要件充足で原則支給 |
| 申請のポイント | 計画届を訓練開始の1ヶ月前までに労働局に提出 |
出典:厚生労働省「人材開発支援助成金」制度概要を基に作成
AI導入の助成金として最も使いやすい制度です。弊社が支援した金属加工メーカー(25名)では、10万円のAI研修で経費助成7.5万円+賃金助成57,600円=合計13.26万円を受給。研修費10万円を上回る助成を受け、実質負担はほぼゼロでした。
重要なポイントは「計画届を訓練開始の1ヶ月前までに提出する」ことです。研修を実施してから「助成金を使いたい」と申請しても遡及適用はできません。必ず事前に計画届を提出してください。
助成金②:業務改善助成金
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 事業場の最低賃金を引き上げた企業 |
| 助成率 | 3/4〜9/10(引き上げ額に応じて) |
| 上限 | 最大600万円 |
| 条件 | 賃上げと生産性向上のための設備投資をセットで実施 |
出典:厚生労働省「業務改善助成金」制度概要を基に作成
賃上げに伴う生産性向上のための設備投資(AI導入を含む)が対象です。「賃上げもしたいし、AIも導入したい」という企業にとっては、両方を同時に実現できる制度です。
助成金③:キャリアアップ助成金
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 非正規雇用労働者のスキルアップ・正社員転換 |
| 助成額 | 1人あたり最大80万円(正社員転換) |
| 条件 | 6ヶ月以上雇用した非正規社員を正社員に転換 |
出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金」制度概要を基に作成
直接的なAI導入支援ではありませんが、AI研修を通じてスキルアップした非正規社員を正社員に転換する場合に活用できます。
判断フローチャート——3つの質問で最適な制度を特定する
「結局うちはどの制度を使えばいいの?」——この質問に対する回答として、3つの質問で最適な制度が特定できるフローチャートを提供します。
質問1:AIの「研修」がしたいですか?「ツール・設備の導入」がしたいですか?
→ 「研修」→ 人材開発支援助成金(助成金①)
研修が目的であれば、迷う必要はありません。人材開発支援助成金一択です。経費75%助成+賃金助成で、実質負担はほぼゼロ。通年申請可能で、要件充足で原則支給。弊社がすべてのクライアントに最初にお勧めする制度です。
→ 「ツール・設備の導入」→ 質問2へ
質問2:導入するのは「既製品のSaaSツール」ですか?「カスタム開発・ハードウェアを含むシステム」ですか?
→ 「既製品のSaaSツール」→ デジタル化・AI導入補助金(補助金①)
AI-OCR、AIチャットボット、AI需要予測SaaS、AI契約書レビューなどの既製品SaaSを導入する場合は、IT導入補助金(デジタル化・AI導入補助金)が最適です。IT導入支援事業者のサポートを受けられるため申請が簡便で、採択率も比較的高い(60〜70%程度)です。
→ 「カスタム開発・ハードウェアを含むシステム」→ ものづくり補助金(補助金②)
AI検品カメラ、カスタムAI開発、GPU搭載サーバーなどのハードウェアを含む設備投資は、ものづくり補助金が最適です。上限額が高く(最大2,500万円)、カスタム開発費用も補助対象になります。
質問3:従業員は20名以下ですか?
→ 「はい」→ 小規模事業者持続化補助金(補助金③)も選択肢に
従業員20名以下の企業は、小規模事業者持続化補助金も検討してください。上限額は小さいですが、AIチャットボットや小規模なAI SaaS導入に活用できます。
判断フローのまとめ表
| 目的 | 投資規模 | 最適な制度 | 種別 |
|---|---|---|---|
| AI研修 | 10〜30万円 | 人材開発支援助成金 | 助成金 |
| AI SaaS導入 | 50〜450万円 | デジタル化・AI導入補助金 | 補助金 |
| カスタムAI開発 | 300万円〜 | ものづくり補助金 | 補助金 |
| 小規模なAI活用 | 〜50万円 | 小規模事業者持続化補助金 | 補助金 |
出典:生成AI総合研究所の支援実績を基に作成
補助金と助成金の併用——異なる経費に対する「二重取り」が可能
「補助金と助成金を両方使うことはできるのか?」——この質問も非常に多いです。
結論:異なる経費に対してであれば併用が可能です。同一経費に対する併用は不可です。
具体的な併用パターンを示します。
| 経費 | 使う制度 | 金額 | 助成・補助額 |
|---|---|---|---|
| AI研修費用 | 人材開発支援助成金(助成金) | 10万円 | 7.5万円+賃金助成 |
| AIツール導入費用 | デジタル化・AI導入補助金(補助金) | 200万円 | 133万円(2/3) |
| 合計 | 210万円 | 約140万円 |
この場合、210万円の投資に対して約140万円が国から支給され、実質負担は約70万円になります。「研修費用は助成金、ツール導入費用は補助金」——経費の目的が異なれば、補助金と助成金の併用は認められています。
弊社が支援した企業でも、この「助成金+補助金」の併用パターンが最も効果的でした。研修で社員のAIリテラシーを上げ、その状態でAIツールを導入することで、ツールの定着率が格段に高まるのです。
コスト・補助金情報
補助金と助成金を含む、AI導入に活用できる制度の全体像は、AI導入で使える補助金・助成金 完全ガイド【2026年最新】で体系的に解説しています。IT導入補助金とものづくり補助金の詳細比較はIT導入補助金vsものづくり補助金をご覧ください。
導入事例——「まず助成金→次に補助金」で成功した企業
事例:金属加工メーカー25名——段階設計の実践
この企業は当初、「ChatGPTを入れたい」というざっくりとした要望で弊社に相談に来ました。弊社のアドバイスは「いきなりツールを入れても使いこなせない。まず研修から始めましょう」でした。
ステップ1(助成金):人材開発支援助成金でAI研修を実施。費用10万円。助成金:経費助成7.5万円+賃金助成約2.8万円=合計10.3万円。実質負担ほぼゼロ。研修後、社員から「次はいつやるんですか」と自発的な要望が出ました。
ステップ2(自力導入):研修で得た知見をもとに、ChatGPT Plusを月3,000円で導入。見積業務のたたき台作成に活用し、月20時間の業務削減を実現。この段階では補助金は使っていません。月3,000円のツールに補助金を申請する必要がなかったのです。
ステップ3(補助金を検討中):現在、AI-OCRシステムの導入を検討中。費用が100万円を超える見込みのため、デジタル化・AI導入補助金の活用を計画しています。
社長の声:「最初はいきなりAI設備を入れたかったが、コンサルタントに『まず研修から』と言われた。結果的に、研修で社員がAIを理解してくれたおかげで、ChatGPTの導入がスムーズだった。いきなり設備を入れても、使いこなせなかったと思う。」
この事例が示しているのは、「補助金ありきでAIを入れる」のではなく「まず確実な助成金で基礎を固め、効果を確認してから補助金でスケールアップする」という段階設計の有効性です。
導入ステップ——補助金・助成金の活用を始めるために
Step 1:自社の目的を明確にする(今日)
「研修がしたい」のか「ツールを導入したい」のかを明確にしてください。本記事のフローチャートで、最適な制度を特定してください。
Step 2:GビズIDプライムを取得する(今日申請)
補助金の申請にはGビズIDプライムが必要です。取得に2〜3週間かかるため、早めに申請してください。助成金の申請には不要ですが、将来の補助金申請に備えて取得しておいてデメリットはありません。
Step 3:助成金を先に申請する(1週間以内)
人材開発支援助成金の計画届を労働局に提出してください。計画届は訓練開始の1ヶ月前までに提出する必要があります。研修の日程が決まったら、すぐに提出してください。
失敗パターンと回避策
パターン1:助成金の計画届を出し忘れる
人材開発支援助成金は、訓練開始の1ヶ月前までに計画届を提出する必要があります。研修を実施してから「助成金を使いたい」と申請しても遡及適用はできません。この「事前提出」を忘れるケースが最も多い失敗です。
パターン2:補助金の交付決定前に発注する
補助金は「交付決定後」に発注・契約する必要があります。採択されたからといって、交付決定の通知が届く前に発注してしまうと、その経費は補助対象外になります。「採択=交付決定」ではないことに注意してください。
パターン3:同一経費で二重申請する
「AI研修」の費用に対して人材開発支援助成金とIT導入補助金の両方を申請するのは二重申請にあたり、禁止されています。経費の仕分けを明確にしてください。
読者の疑問に答える——補助金と助成金で迷う声
——「補助金と助成金、どちらが申請しやすいですか?」
手続きの簡単さで言えば助成金です。人材開発支援助成金は、計画届の提出→研修実施→支給申請という流れで、要件を満たせば原則支給されます。補助金は計画書の作成に2〜4週間かかり、採択されない可能性もあります。「まず助成金から」が弊社の推奨です。
——「助成金は雇用保険加入企業しか使えない」と聞きましたが本当ですか?」
はい、厚生労働省の助成金は雇用保険に加入している企業が対象です。ただし、従業員を1人でも雇用していれば雇用保険への加入義務があるため、ほとんどの企業が対象になります。役員のみの会社(従業員ゼロ)は対象外です。
——「個人事業主でも使えますか?」
補助金(IT導入補助金、小規模事業者持続化補助金)は個人事業主も申請できます。助成金(人材開発支援助成金)は、雇用保険に加入している事業主が対象なので、従業員を雇用している個人事業主であれば利用可能です。事業主本人への研修は助成の対象外です。
——「補助金の『後払い』がネックです。つなぎ資金はどうすればいいですか?」
補助金は後払いのため、先に費用を支出する必要があります。つなぎ資金としては、日本政策金融公庫の融資や、取引銀行の短期融資が選択肢になります。助成金も後払いですが、研修費用は比較的小額(10〜30万円)なので、つなぎ資金の問題は起きにくいです。
——「補助金が不採択になっても助成金は使えますか?」
はい。補助金と助成金は管轄も制度も別なので、補助金が不採択でも助成金には影響しません。「補助金が不採択→助成金でまず研修→計画を練り直して補助金に再申請」という流れは、実務的にも理にかなっています。
まとめ:「まず助成金、次に補助金」が失敗しない王道パターン
補助金と助成金の違いを理解し、自社の状況に合った制度を選ぶことが、AI導入を成功させる第一歩です。
弊社が推奨する判断フレームは「まず助成金(人材開発支援助成金)。話はそれから」です。
- 助成金でAI研修を実施する(実質負担ほぼゼロ・確実に受給)
- 研修で社員のAIリテラシーを上げる
- ChatGPT Plus等を月3,000円で自費導入(効果を確認)
- 規模を拡大する段階で、補助金でツール・設備を導入
今日やるべきことは2つです。
- 本記事のフローチャートで、自社に最適な制度を特定する
- GビズIDプライムの取得を申請する(まだの方は今すぐ)
補助金・助成金の制度全体を俯瞰したい方は、AI導入で使える補助金・助成金 完全ガイド【2026年最新】をご覧ください。
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出典・参考:
– 中小企業庁「補助金等の概要」
– 厚生労働省「事業主の方のための雇用関係助成金」
– 中小企業庁「ものづくり補助金」第22次採択結果(申請1,552件中582件採択、採択率37.5%)
– 中小企業庁「デジタル化・AI導入補助金」公募要領(2026年度)
– 厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)」制度概要
– 中小企業基盤整備機構「中小企業のAI導入・活用状況調査」(2026年3月)
※本記事の情報は2026年5月時点のものです。制度の内容は変更される場合があります。最新情報は各公式サイトをご確認ください。
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