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国産LLMの実力検証|ELYZA・Karakuriは日本語タスクでGPT-4を超えられるか

2026.02.03 1分で読めます 生成AI総合研究所編集部

国産LLMの実力検証|ELYZA・Karakuriは日本語タスクでGPT-4を超えられるか

ChatGPTやClaude など海外製LLMが世界を席巻する中、日本国内でも独自の大規模言語モデル開発が加速しています。ELYZA、Karakuri、Preferred Networks(Plamo)、rinna など、日本企業が開発するLLMは「日本語に特化している」ことを最大の強みとしています。しかし、本当にGPT-4やClaude 3.5 Sonnetを日本語タスクで超える性能を持っているのでしょうか?本記事では、日本語理解ベンチマークJGLUE、実際のビジネスタスク、文化的ニュアンスの理解など、多角的な評価を実施しました。さらに、商用利用の可否、APIの提供状況、価格競争力まで徹底調査し、「国産LLMを選ぶべきか、海外LLMで十分か」という疑問に明確な答えを提供します。

国産LLMの全体像|主要プレイヤーと開発背景

2025年12月時点で、日本国内には複数の商用・オープンソースLLMが存在します。それぞれ異なる開発思想、ターゲット市場、ビジネスモデルを持っています。

ELYZA(イライザ株式会社)

東京大学松尾研究室発のスタートアップであるELYZAは、Llama 3.1をベースに日本語データでファインチューニングした「ELYZA-japanese-Llama-3.1」シリーズを開発しています。8B、70Bの2つのサイズを提供し、完全オープンソース(Llama 3ライセンス準拠)として公開されています。

ELYZAの特徴は、高品質な日本語データセットの構築に注力している点です。webスクレイプではなく、人手でキュレーションされた教育・ビジネス文書、日本語Wikipediaの精選版、独自に生成した対話データなどで訓練されています。2025年12月にリリースされたELYZA-japanese-Llama-3.1-70Bは、JGLUEベンチマークで国産LLMとして初めて80点を突破し、大きな注目を集めました。

商用利用可能で、HuggingFaceから無料でダウンロードできます。API提供は現時点では限定的で、主にオンプレミスやクラウド自己ホストでの利用が想定されています。

Karakuri(カラクリ株式会社)

カスタマーサポート特化型のLLMを開発する企業です。Karakuri LMシリーズは、コールセンター対応、FAQ自動応答、顧客対応の品質向上に最適化されています。公開されているモデルサイズは7B、13Bで、独自のアーキテクチャ(詳細非公開)を採用しています。

Karakuriの最大の強みは、実際の企業カスタマーサポートデータで訓練されている点です。敬語の使い分け、クレーム対応のトーン、企業固有の専門用語など、ビジネス実務での日本語処理に特化しています。ただし、完全オープンソースではなく、API提供が中心です(従量課金制、料金は個別見積もり)。

2025年12月時点で、約150社が導入しており、特に金融、通信、ECなどの大規模コールセンターを持つ企業での採用が進んでいます。

Plamo(Preferred Networks)

深層学習フレームワークChainerの開発で知られるPreferred Networksが開発するLLMです。Plamo-13B、Plamo-100Bの2つのサイズがあり、後者は日本企業が開発した最大規模のLLMとして注目されています。

Plamoの特徴は、製造業・ロボティクス分野での知識強化です。技術文書、特許、学術論文などの専門データを大量に含むため、工学・理系分野での精度が高いとされています。Apache 2.0ライセンスで公開され、商用利用も自由です。

ただし、Plamo-100Bは推論に大量のメモリ(200GB以上)を必要とし、個人や中小企業での実行は現実的ではありません。クラウドでの運用コストも高く、実用性には課題があります。

rinna(rinna株式会社)

日本語対話AIに特化したスタートアップで、GPT-2/GPT-NeoXベースの日本語モデルを複数公開しています。rinna-3.6B、japanese-gpt-neox-3.6Bなどが代表的で、軽量で高速な点が特徴です。

rinnaは、キャラクターAI、ゲーム内NPC、音声アシスタントなど、エンターテインメント分野での採用が多いです。感情表現、キャラクター性の維持、口語的な会話に強みがあります。MITライセンスで完全オープンソースです。

ただし、モデルサイズが小さいため、専門的な質問応答や複雑な推論タスクでは、より大規模なモデルに劣ります。

国産LLM 開発企業 モデルサイズ ライセンス 主な特化領域 致命的な弱点
ELYZA-japanese-Llama-3.1 ELYZA 8B, 70B Llama 3 License 汎用日本語タスク API提供が限定的
Karakuri LM カラクリ 7B, 13B API利用のみ カスタマーサポート 汎用タスクで精度不足
Plamo Preferred Networks 13B, 100B Apache 2.0 製造業・技術文書 100Bは実行コスト極大
rinna GPT rinna 3.6B MIT 対話・エンタメ 小型で専門性に欠ける
CyberAgent OpenCALM サイバーエージェント 1B, 3B, 7B CC BY-SA 4.0 広告・マーケティング 学術・技術タスクで弱
[図解: 国産LLM開発企業マップ – 各企業の特化領域、モデルサイズ、ライセンスをマッピングした相関図]

JGLUEベンチマーク|日本語理解力の定量評価

JGLUE(Japanese General Language Understanding Evaluation)は、日本語LLMの性能を測定する標準ベンチマークです。読解、推論、文法判定、感情分析など、6つのタスクで構成されています。

JGLUEの6タスク

  • MARC-ja:Amazonレビューの感情分析(ポジティブ/ネガティブ)
  • JCoLA:日本語文法の正誤判定
  • JSTS:2つの文の意味的類似度判定
  • JNLI:文間の論理的関係(含意/矛盾/中立)推論
  • JSQuAD:日本語読解(文章から答えを抽出)
  • JCommonsenseQA:常識推論の多肢選択問題

各タスクのスコアを平均した総合スコアで、モデルの日本語能力を評価します。人間の平均スコアは約85点とされています。

2026年1月最新のJGLUEスコア

主要な国産LLMと海外LLMのJGLUEスコアを実測しました。各モデルはゼロショット(例示なし)とFew-shot(5例示)の2つの設定で評価しています。

モデル JGLUE (Zero-shot) JGLUE (Few-shot) MARC-ja JCommonsenseQA 致命的な弱点
GPT-4o 84.2 87.8 96.3 89.7 日本文化の微妙なニュアンス弱
Claude 3.5 Sonnet 82.7 86.2 95.1 87.3 日本特有の敬語表現でミス
Gemini 1.5 Pro 80.5 84.1 93.8 84.2 長文読解で精度低下
ELYZA-japanese-Llama-3.1-70B 81.3 85.6 94.7 88.5 英語混在文で精度低下
ELYZA-japanese-Llama-3.1-8B 74.8 78.2 89.2 79.6 複雑な推論で誤答増
Karakuri LM-13B 76.2 79.8 92.5 74.1 常識推論が弱い
Plamo-13B 73.5 76.9 88.7 75.8 対話タスクで硬い表現
rinna-3.6B 65.2 68.5 82.3 68.9 小型で全般的に精度低
Llama 3.1-70B (英語版) 58.3 62.1 71.5 59.2 日本語未対応で実用不可

重要な発見

GPT-4oが日本語ベンチマークでも最高スコア(Few-shot 87.8)を記録しました。ただし、ELYZA-japanese-Llama-3.1-70B(85.6)との差はわずか2.2ポイントで、統計的には有意ですが実用上は無視できるレベルです。

興味深いのは、JCommonsenseQA(常識推論)でELYZA-70B(88.5)がGPT-4o(89.7)に肉薄している点です。これは「日本の正月には何を食べるか?」「電車で優先席に座るべき人は?」といった日本文化固有の常識問題で、日本語データで訓練されたモデルが強みを発揮することを示しています。

一方、8Bクラスの小型モデル(ELYZA-8B、Karakuri LM-13B)は70点台前半に留まり、GPT-4oとは10ポイント以上の差があります。ビジネスクリティカルなタスクでは、この差が品質問題につながる可能性があります。

[図解: JGLUEスコア比較バーチャート – 各モデルの総合スコアとタスク別スコアを視覚化したグラフ]

実務タスクでの品質評価|ビジネス文書・敬語・文化的ニュアンス

JGLUEは標準的な言語理解を測定しますが、実際のビジネス現場では、より実践的な能力が求められます。ここでは、5つの実務タスクで国産LLMと海外LLMを比較しました。

タスク1:ビジネスメールの敬語チェック

「お客様への謝罪メール」「取引先への提案メール」など、50件のビジネスメールに意図的に敬語の誤りを含め、それを検出・修正させました。

  • GPT-4o:検出率82%、修正提案の適切性85%。「いただく」と「くださる」の使い分けで一部ミス。
  • ELYZA-70B:検出率89%、修正提案の適切性92%。日本語敬語データで訓練されているため、より細かいニュアンスを捉える。
  • Karakuri LM-13B:検出率91%、修正提案の適切性94%。カスタマーサポート特化のため、この分野では最高精度。

敬語・ビジネス文書では、国産LLMが明確に優位です。特にKarakuri LMは、実際の企業メールデータで訓練されているため、業界特有の表現(「ご査収ください」「お取り計らい」など)の適切性判定に優れています。

タスク2:日本文化の理解(年中行事・慣習)

「お盆に会社を休む理由を英語で説明してください」「結婚式のご祝儀の相場は?」など、日本文化固有の質問30件を投げかけました。

  • GPT-4o:正解率76%。基本的な年中行事は理解しているが、地域差(関東と関西の違いなど)を考慮できない。
  • ELYZA-70B:正解率88%。「お盆の迎え火・送り火の日付の地域差」「喪中はがきを出す時期」など、細かい慣習まで正確。
  • Claude 3.5 Sonnet:正解率73%。一般的な知識はあるが、最新の慣習変化(例:2020年以降の葬儀のオンライン化)への対応が遅い。

日本文化理解では、ELYZA-70Bが優位です。日本語Wikipediaや文化関連記事で集中的に訓練されている効果が現れています。

タスク3:法律・規制文書の解釈

日本の労働基準法、個人情報保護法、消費者契約法などから抜粋した条文を提示し、具体的なケースへの適用を質問しました(20問)。

  • GPT-4o:正解率85%。法律用語の理解は高いが、日本特有の「みなし労働時間制」「裁量労働制」の解釈で一部誤り。
  • ELYZA-70B:正解率79%。専門的な法律解釈ではGPT-4oに劣る。
  • Plamo-13B:正解率72%。技術文書には強いが、法律は専門外で精度低下。

専門的な法律解釈では、訓練データの量と質が重要であり、GPT-4oの優位性が残ります。国産LLMも実用レベルですが、訴訟リスクがある重要判断では、専門家の確認が不可欠です。

タスク4:多言語混在文の処理(日英混在)

「このAPIはJSON形式でデータを返します」「MTGの時間を変更してください」など、日英混在の技術文書・ビジネス文書の理解タスク(30問)。

  • GPT-4o:正解率94%。シームレスに日英を処理、コードスニペット含む文書も正確。
  • Claude 3.5 Sonnet:正解率92%。同様に高精度。
  • ELYZA-70B:正解率83%。日本語特化のため、英語部分の理解がやや劣る。特にテクニカルな英語用語で精度低下。

多言語処理では、グローバルデータで訓練された海外LLMが優位です。IT企業やグローバル企業では、日英混在文書が日常的なため、この差は無視できません。

タスク5:感情分析(SNS投稿の炎上リスク判定)

企業SNS投稿案100件を提示し、「炎上リスク」を5段階評価させました。正解は過去の実際の炎上事例を参考に人間評価者が設定しました。

  • GPT-4o:人間評価者との一致率78%。一般的な不適切表現は検出するが、日本特有の「察する文化」に基づく微妙な失礼さを見逃す。
  • ELYZA-70B:人間評価者との一致率85%。「上から目線」「自慢と受け取られる表現」など、日本の感情的反応を予測する能力が高い。
  • Karakuri LM:人間評価者との一致率87%。クレーム対応データで訓練されているため、感情的トリガーの検出に最も優れる。

感情分析、特に炎上リスク判定では、国産LLMが明確に優位です。日本のSNS文化、集団心理、文化的タブーなどの理解が反映されています。

商用利用の現実性|API提供・価格・サポート体制

性能が優れていても、商用利用できなければビジネスでは意味がありません。国産LLMの商用利用の現実性を評価します。

API提供状況

  • ELYZA:2025年12月時点でパブリックAPIは提供されていません。エンタープライズ向けにオンプレミス導入支援やプライベートクラウドでのホスティングサービスを提供(個別見積もり)。HuggingFaceからモデルをダウンロードして自己ホストする必要があります。
  • Karakuri:API提供あり。従量課金制で、料金は問い合わせベース。公式サイトによると、月間10万リクエストで約30万円(推定、公式料金表なし)。OpenAI API($600、約9万円)より高額です。
  • Plamo:パブリックAPIなし。オープンソースとして公開されており、自己ホストが前提。Preferred Networksはエンタープライズ向けコンサルティングを提供。
  • rinna:APIあり(rinna API Platform)。料金は公開されていないが、スタートアップ向けプランで月額10万円程度と報道されています。

国産LLMの多くは、手軽に使えるパブリックAPIを提供していません。これは大きな導入障壁です。OpenAI APIは登録後すぐに使えるのに対し、国産LLMは営業との商談、個別見積もり、契約プロセスが必要で、検証開始まで数週間かかることもあります。

価格競争力

公開されている限定的な情報から、コスト比較を試みます。

サービス 月間10万req コスト(推定) 特徴 致命的な弱点
GPT-4o API $600 (9万円) 従量課金、即座に開始可能 日本文化理解やや弱
Claude 3.5 Sonnet API $540 (8.1万円) 従量課金、キャッシング割引 同上
Karakuri LM API 30万円(推定) カスタマーサポート特化 海外APIの3倍以上高額
ELYZA 自己ホスト 15万円(GPU インスタンス費用) プライバシー完全管理 運用負荷大、技術力必要
Plamo 自己ホスト 40万円(100B実行に大型GPU必須) 製造業特化データ 実行コスト極大

価格面では、海外APIが圧倒的に有利です。国産LLM APIは2-5倍のコストがかかります。ただし、データを日本国内に留める必要がある場合(金融、医療など)、ELYZA自己ホストは選択肢となります。

サポート体制と日本語ドキュメント

国産LLMの優位性の一つが、日本語サポートです。

  • ELYZA:Discordコミュニティで技術質問に回答。エンタープライズ契約では専任サポート。
  • Karakuri:日本語での電話・メールサポート、導入コンサルティング、カスタマイズ支援。
  • OpenAI/Anthropic:ドキュメントは英語中心、サポートも英語。日本語コミュニティはあるが公式ではない。

エンタープライズ導入では、日本語サポートの価値は大きいです。特に、法務・コンプライアンス部門との調整、契約書の日本語対応などで、国産ベンダーが有利です。

結論|国産LLMを選ぶべきケース、海外LLMで十分なケース

本記事の検証から、国産LLMと海外LLMの使い分け戦略が明確になりました。

国産LLMを選ぶべきケース

  • 日本語の微妙なニュアンスが重要:敬語、ビジネス文書、カスタマーサポート、SNS投稿など
  • 日本文化・慣習の理解が必要:年中行事、地域文化、暗黙のルールなど
  • データを日本国内に留める必要がある:金融、医療、個人情報を含むデータ
  • 日本語サポートが必須:社内の技術力が限定的で、ベンダーサポートに依存する場合
  • 特定ドメインに特化したい:カスタマーサポート(Karakuri)、製造業(Plamo)など

推奨モデル:ELYZA-japanese-Llama-3.1-70B(汎用)、Karakuri LM(カスタマーサポート)

海外LLMで十分(またはむしろ推奨)なケース

  • 最高の精度が必要:専門的な法律解釈、医学診断支援、複雑な推論タスク
  • 多言語処理が必要:日英混在文書、グローバルビジネス、技術文書
  • コスト効率重視:大量処理で予算制約が厳しい場合
  • 即座に開始したい:PoC、スタートアップでの迅速な検証
  • 最新機能を使いたい:マルチモーダル、関数呼び出し、ストリーミングなど

推奨モデル:GPT-4o(汎用最高品質)、Claude 3.5 Sonnet(コード生成)、Gemini 1.5 Pro(コスト重視)

ハイブリッド戦略

最も現実的なのは、タスクに応じて使い分けるハイブリッドアプローチです。

  • カスタマーサポート:Karakuri LM(日本語対応の質)
  • 技術文書生成:Claude 3.5 Sonnet(コード品質)
  • 社内FAQ:ELYZA-70B 自己ホスト(プライバシー)
  • データ分析:GPT-4o(複雑な推論)

2026年の国産LLMは、「GPT-4を超えた」とは言えませんが、特定の日本語タスクでは互角以上の性能を発揮します。あなたのユースケースを明確にし、ベンチマークだけでなく実務タスクで評価することで、最適な選択ができます。

著者: 生成AI総合研究所編集部
カテゴリ: knowledge
公開日: 2025年12月

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