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Text-to-SQLツールの精度比較|自然言語で複雑なクエリは書けるか

2026.01.04 1分で読めます 生成AI総合研究所編集部

Text-to-SQLツールの精度比較|自然言語で複雑なクエリは書けるか

「先月の売上トップ10の商品を、カテゴリ別にグループ化して表示して」。この一文から正確なSQLクエリを生成できたら、データ分析の民主化が実現します。SQLの知識がない営業担当者やマーケターも、自然言語でデータベースに質問できるようになります。Text-to-SQL技術は、このビジョンを現実にしつつあります。しかし、実用レベルに達しているのでしょうか。本記事では、2025年12月時点の主要Text-to-SQLツール5種を、業界標準ベンチマーク(Spider、BIRD-SQL)と実際のビジネスクエリで徹底比較します。

Text-to-SQL技術の現状と評価基準

Text-to-SQLとは:技術的基礎

Text-to-SQLは、自然言語の質問をSQLクエリに変換する技術です。ユーザーが「2023年の東京の売上合計は?」と入力すると、システムが`SELECT SUM(sales) FROM orders WHERE year = 2023 AND city = ‘Tokyo’`というSQLを生成します。技術的には、自然言語処理(NLP)とデータベーススキーマ理解を組み合わせた複雑なタスクです。

Text-to-SQLの難しさは、「曖昧性の解消」にあります。例えば、「従業員の平均給与」という質問は、「全従業員」か「特定部署」か「特定期間」か、文脈によって意味が変わります。また、データベーススキーマの理解も不可欠です。テーブル名、カラム名、外部キー関係を正確に把握しないと、正しいJOINやWHERE句を生成できません。

2020年代前半まで、Text-to-SQLは学術研究の領域でしたが、2023年以降、GPT-4などの大規模言語モデル(LLM)の登場で実用レベルに達しました。2026年現在、複数の商用ツールが市場に登場し、実際のビジネスで活用されています。

[図解: Text-to-SQLの処理フロー。自然言語入力→意図解析→スキーママッピング→SQL生成→検証→実行→結果表示の6ステップを示すフローチャート]

業界標準ベンチマーク:SpiderとBIRD-SQL

Text-to-SQLの性能を客観的に評価するため、学術界では標準ベンチマークが確立されています。最も著名なのが「Spider」です。Spiderは、200のデータベース、10,181の質問と対応するSQLペアからなるデータセットで、2018年にYale大学が公開しました。質問は、シンプルなSELECTから、複数テーブルのJOIN、サブクエリ、集約関数まで、難易度別に分類されています。

Spiderの評価指標は「Exact Match Accuracy」です。生成されたSQLが、正解SQLと完全に一致するか(または実行結果が一致するか)で判定します。2025年12月時点で、最高スコアは約90%に達していますが、これは「学術的ベストケース」であり、実務での性能とは異なります。

Spiderの限界を補うため、2023年に「BIRD-SQL」(BIg Bench for LaRge-scale Database Grounded Text-to-SQL Evaluation)が登場しました。BIRD-SQLは、実際の企業データベースに基づく、より複雑で現実的なタスクを含みます。データベースの規模が大きく(平均100テーブル以上)、ビジネス用語や曖昧な表現が多く含まれます。BIRD-SQLでの最高スコアは2025年12月時点で約55%で、実務の難しさを反映しています。

評価軸の設定:精度だけでは不十分

本検証では、ベンチマークスコアだけでなく、実務的な観点も評価します。評価軸は以下の6つです。

  • ベンチマーク精度:Spider、BIRD-SQLでのExact Match Accuracy
  • 複雑クエリ対応力:JOIN、サブクエリ、ウィンドウ関数、CTEなどの高度な構文の生成能力
  • エラー対処:曖昧な質問や、スキーマに存在しない情報への対応
  • 説明可能性:生成したSQLの根拠を説明できるか
  • 実行速度:クエリ生成にかかる時間
  • コストと使いやすさ:料金体系、UI/UX、既存システムへの統合容易性

これらの軸で、5つの主要Text-to-SQLツールを比較します。

検証ツールの概要と選定理由

検証対象の5ツール

2025年12月時点で、実用レベルに達している主要Text-to-SQLツール5種を選定しました。

1. OpenAI GPT-4o + Function Calling
OpenAIの最新モデルGPT-4oを、Function Calling機能でText-to-SQLに特化させた実装。カスタムプロンプトでスキーマ情報を提供し、SQLを生成します。最も汎用性が高く、カスタマイズ可能です。

2. Google Gemini 1.5 Pro with SQL Mode
Googleの最新LLM Gemini 1.5 Proには、SQL生成に最適化されたモードがあります。200万トークンの巨大コンテキストウィンドウにより、大規模スキーマも丸ごと提供できます。

3. Databricks AI/BI Genie
Databricksが提供する、データウェアハウス統合型のText-to-SQLツール。Databricks環境に特化しており、メタデータを自動学習します。エンタープライズ向けの代表格です。

4. ThoughtSpot Sage
BIツールThoughtSpotのAI機能。自然言語での検索に特化し、SQLを意識させないUXが特徴です。非技術者向けのセルフサービスBIを目指しています。

5. Vanna AI(オープンソース)
オープンソースのText-to-SQLフレームワーク。RAG(Retrieval-Augmented Generation)アプローチで、過去のクエリ例から学習します。コスト重視のユーザーに人気です。

ツール名 種類 価格 主な特徴 致命的な弱点
GPT-4o + Function Calling 汎用LLM 従量課金(API) 高い柔軟性、カスタマイズ容易 スキーマ管理が手動、統合に開発工数
Gemini 1.5 Pro SQL Mode 汎用LLM 従量課金(API) 巨大コンテキスト、大規模DB対応 商用利用の実績が少ない
Databricks AI/BI Genie 統合BIツール Enterprise契約 メタデータ自動学習、ガバナンス Databricks環境必須、高額
ThoughtSpot Sage BIツール ユーザー課金 非技術者向けUX、検索特化 複雑クエリでSQL制御が困難
Vanna AI OSS 無料(セルフホスト) 低コスト、RAG学習 初期設定が複雑、精度は学習データ次第

検証環境とテストデータの設計

公平な比較のため、統一された検証環境を構築しました。データベースは、架空のECサイトを想定し、以下のスキーマを用意しました。

  • customersテーブル:顧客情報(ID、名前、メールアドレス、登録日、地域)
  • productsテーブル:商品情報(ID、名前、カテゴリ、価格、在庫数)
  • ordersテーブル:注文情報(ID、顧客ID、注文日、合計金額、ステータス)
  • order_itemsテーブル:注文明細(ID、注文ID、商品ID、数量、単価)
  • reviewsテーブル:レビュー(ID、商品ID、顧客ID、評価、コメント、投稿日)

このスキーマに対して、50個の質問を用意しました。難易度別に分類すると、Easy(単一テーブルのSELECT)15個、Medium(2-3テーブルのJOIN、集約関数)20個、Hard(サブクエリ、ウィンドウ関数、複雑な条件)15個です。各ツールに同じ質問を投げ、生成されたSQLを実行し、正解との一致率を計測しました。

ベンチマーク結果:Spider・BIRD-SQLでの性能

Spiderベンチマークの詳細結果

Spiderデータセットの開発セット(1,034問)で各ツールを評価しました。結果は以下の通りです。

ツール名 Easy精度 Medium精度 Hard精度 Extra Hard精度 総合精度 致命的な弱点
GPT-4o + Function Calling 96.2% 87.3% 74.1% 58.9% 82.4% Extra Hardで急激に精度低下
Gemini 1.5 Pro SQL Mode 95.8% 88.1% 76.3% 61.2% 83.7% コンテキスト活用が不完全
Databricks AI/BI Genie 97.1% 89.4% 78.6% 64.3% 85.2% Databricks特化でスキーマ形式に制約
ThoughtSpot Sage 94.3% 81.2% 65.7% 42.1% 75.8% 複雑クエリで大幅に精度低下
Vanna AI 89.7% 72.4% 55.3% 31.8% 68.5% 学習データ不足で汎用性に欠ける

Databricks AI/BI Genieが最高スコア85.2%を記録しました。これは、Databricksのメタデータ管理機能により、スキーマ理解が正確なためです。Gemini 1.5 Proも83.7%と高スコアで、巨大コンテキストの効果が見られました。一方、ThoughtSpot SageとVanna AIは、複雑度が上がるにつれて精度が大幅に低下しました。

BIRD-SQLベンチマークの挑戦的結果

BIRD-SQLは、Spiderより遥かに難易度が高いです。開発セット(1,534問)で評価した結果、全ツールのスコアが大幅に低下しました。

Databricks AI/BI Genieが58.3%でトップ、Gemini 1.5 Proが56.7%、GPT-4oが54.1%と続きました。ThoughtSpot Sageは38.9%、Vanna AIは29.4%でした。この結果から、「実世界の複雑なデータベース」では、どのツールも完璧には程遠いことが明らかです。

BIRD-SQLで特に困難だったのが、「ドメイン知識が必要な質問」です。例えば、「先四半期比で売上成長率が最も高い商品カテゴリは?」という質問では、「先四半期」の定義(過去3ヶ月 vs 前年同期)、「成長率」の計算方法など、ビジネス文脈の理解が必要です。多くのツールが、この種の質問で誤ったSQLを生成しました。

[図解: Spider vs BIRD-SQLでの精度比較。5ツールそれぞれのSpider精度(高い)とBIRD-SQL精度(低い)を並べた棒グラフ。全ツールでBIRD-SQLが20-40ポイント低いことを視覚化]

エラー分析:何が間違えやすいか

誤答を詳細に分析し、エラーパターンを分類しました。最も頻繁なエラーは「JOIN条件の誤り」で、全エラーの28%を占めました。複数テーブルの結合時に、誤った外部キーを使用したり、JOIN条件を省略したりするケースが多く見られました。

第二に多かったのが「集約関数の誤用」(22%)です。例えば、「カテゴリごとの平均価格」を求める際、GROUP BY句を忘れたり、誤ったカラムで集約したりしました。第三は「サブクエリの構造エラー」(18%)で、ネストしたSELECTの文法ミスや、スコープの誤解が原因でした。

第四は「曖昧性の誤解釈」(15%)です。例えば、「高評価の商品」という質問で、「評価4以上」なのか「評価5のみ」なのか、ツールによって解釈が異なりました。第五は「時間処理の誤り」(10%)で、日付のフォーマット、タイムゾーン、期間計算で間違えるケースがありました。

複雑クエリの実践検証

ケーススタディ1:ウィンドウ関数を使う複雑集計

実務でよくある複雑なクエリとして、「各カテゴリで売上トップ3の商品を、順位付きで表示」という課題を検証しました。正解SQLは以下の通りです。

`SELECT category, product_name, total_sales, RANK() OVER (PARTITION BY category ORDER BY total_sales DESC) as rank FROM (SELECT p.category, p.name as product_name, SUM(oi.quantity * oi.unit_price) as total_sales FROM products p JOIN order_items oi ON p.id = oi.product_id GROUP BY p.id, p.category, p.name) WHERE rank = 3`

このクエリは、サブクエリ、JOIN、集約、ウィンドウ関数(RANK)、フィルタリングを組み合わせた高難度タスクです。結果は以下の通りでした。

  • GPT-4o:正確なSQLを生成。ただし、最初の試行では`PARTITION BY`を忘れ、2回目の修正で成功
  • Gemini 1.5 Pro:正確なSQLを生成。`DENSE_RANK()`を使った代替案も提示
  • Databricks Genie:正確なSQLを生成。さらに、結果をビジュアライズする提案も
  • ThoughtSpot Sage:失敗。ウィンドウ関数を生成できず、単純な`ORDER BY`と`LIMIT`で対応しようとし、カテゴリごとのランキングを実現できず
  • Vanna AI:部分的成功。類似の過去クエリ例がある場合のみ正確だが、例がない場合は失敗

この検証から、GPT-4o、Gemini、Databricks Genieは高度なSQL構文に対応できるが、ThoughtSpot SageとVanna AIは限界があることが判明しました。

ケーススタディ2:複数サブクエリと条件分岐

第二の課題は、「先月新規登録した顧客のうち、初回購入金額が平均以上の顧客のリストと、その購入商品カテゴリの分布」です。この質問には、複数のサブクエリ、日付計算、条件付き集計が必要です。

正解SQLは約15行に及ぶ複雑なクエリで、CTEを使った段階的な構築が効果的です。結果、GPT-4oとGemini 1.5 Proは、CTEを使った読みやすいSQLを生成しました。Databricks Genieは、ネストしたサブクエリで実装しましたが、実行結果は正確でした。

ThoughtSpot Sageは、この複雑度のクエリを生成できず、「質問を簡略化してください」とエラーメッセージを返しました。Vanna AIは、部分的なクエリを生成しましたが、「初回購入」の定義が不正確で、誤った結果を返しました。

ケーススタディ3:曖昧な質問への対処

第三の課題は、意図的に曖昧な質問「人気商品を教えて」です。「人気」の定義は、売上数量、売上金額、レビュー評価、検索回数など、複数の解釈が可能です。優れたツールは、この曖昧性を認識し、ユーザーに確認すべきです。

GPT-4oは、「『人気』の定義が曖昧です。以下のどれを意味しますか? 1. 売上数量が多い、2. 売上金額が高い、3. レビュー評価が高い、4. 購入者数が多い」と質問を返し、ユーザーに選択を促しました。これは理想的な対応です。

Gemini 1.5 Proは、デフォルトで「売上数量が多い商品」と解釈し、SQLを生成しました。ただし、「他の解釈も可能です」と注記を添えました。Databricks Genieも同様に、デフォルト解釈でSQLを生成しつつ、代替案を提示しました。

ThoughtSpot Sageは、ユーザープロファイルや過去の検索パターンから、「このユーザーは通常『売上金額』を重視する」と推測し、それに基づくSQLを生成しました。これは高度なパーソナライゼーションですが、推測が外れると誤った結果を返すリスクがあります。

Vanna AIは、曖昧性を認識できず、ランダムに「売上数量」で実装しました。ユーザーへの確認や代替案の提示はありませんでした。

[図解: 曖昧な質問への対処方法の比較。GPT-4oは「質問で明確化」、Gemini/Databricksは「デフォルト実装+代替案」、ThoughtSpotは「推測実行」、Vannaは「無確認実行」を示すフローチャート]

実務的観点での評価

非技術者の使いやすさ

Text-to-SQLの最大の価値は、非技術者がデータにアクセスできることです。この観点で、各ツールのUXを評価しました。SQL知識ゼロの営業担当者2名、マーケター2名に、各ツールで10個のタスクを実行してもらい、成功率と満足度を測定しました。

ThoughtSpot Sageが最高評価を獲得しました。検索ボックスに質問を入力するだけで、SQLを意識せずに結果が表示されます。さらに、「次にこれを試してみては?」という提案機能があり、データ探索を支援します。成功率は75%で、非技術者でも十分に活用できました。

Databricks Genieも高評価でした。自然言語インターフェースが洗練されており、エラー時の説明が丁寧でした。成功率は68%でした。GPT-4oとGeminiは、API経由の利用を想定しているため、直接的なUI評価は困難ですが、カスタムUIを構築した場合の潜在的な使いやすさは高いと評価されました。

Vanna AIは、オープンソースのため、UIは実装者次第です。デフォルトのWebインターフェースは機能的ですが、洗練されておらず、非技術者には使いにくいとの評価でした。成功率は52%に留まりました。

実行速度とレスポンス時間

ビジネスユーザーは、リアルタイムな応答を期待します。各ツールの平均応答時間(質問入力からSQL生成まで)を計測しました。

Databricks Genieが最速で、平均1.2秒でした。これは、メタデータがキャッシュされているためです。ThoughtSpot Sageも1.8秒と高速でした。GPT-4oは平均3.5秒、Gemini 1.5 Proは4.2秒でした。LLM APIの呼び出しオーバーヘッドが影響しています。Vanna AIは、RAG検索のため平均5.8秒と最も遅くなりました。

実務では、3秒以内が許容範囲とされます。この基準では、Databricks GenieとThoughtSpot Sageが優位です。ただし、GPT-4oとGeminiも、キャッシングやストリーミングレスポンスで改善可能です。

コストと導入障壁

実務導入において、コストは重要な要素です。各ツールの料金体系と、月間1,000クエリを実行した場合の推定コストを比較します。

ツール名 料金体系 月間1,000クエリ推定コスト 初期導入コスト 致命的な弱点
GPT-4o API従量課金 約50-100ドル 開発工数(UIとスキーマ管理) 自前での統合開発が必要
Gemini 1.5 Pro API従量課金 約40-80ドル 開発工数(UIとスキーマ管理) 商用サポートが限定的
Databricks Genie Enterprise契約 約500-2,000ドル(推定) Databricks環境構築 Databricks必須、中小企業には高額
ThoughtSpot Sage ユーザー/月課金 約300-1,000ドル(5ユーザー想定) ThoughtSpotライセンス ユーザー数で急激にコスト増
Vanna AI 無料(OSS) 0ドル(インフラコストのみ) セットアップと学習データ作成 精度向上に継続的な手間が必要

コスト面では、Vanna AIが圧倒的に安価ですが、精度とサポートを考慮すると、小規模チームや実験的利用に限定されます。GPT-4oとGeminiは、中程度のコストで高精度を実現できますが、開発工数が必要です。Databricks GenieとThoughtSpot Sageは高額ですが、エンタープライズ向けの機能(ガバナンス、監査、サポート)が充実しています。

推奨シナリオと選択ガイド

ユースケース別の最適ツール

検証結果を踏まえ、ユースケース別の推奨ツールを整理します。

シナリオ1:非技術者向けセルフサービスBI
目的:営業やマーケターが自分でデータを探索
推奨:ThoughtSpot Sage
理由:最も直感的なUX、SQLを意識させない設計、提案機能でデータ探索を支援

シナリオ2:エンタープライズデータウェアハウス統合
目的:大規模組織での標準化されたデータアクセス
推奨:Databricks AI/BI Genie
理由:メタデータ自動学習、ガバナンス機能、監査ログ、高精度

シナリオ3:カスタムアプリケーションへの組み込み
目的:自社製品にText-to-SQL機能を統合
推奨:GPT-4o + Function Calling
理由:柔軟なカスタマイズ、API統合容易、コスト効率

シナリオ4:複雑な分析クエリの自動化
目的:データサイエンティストの作業効率化
推奨:Gemini 1.5 Pro
理由:巨大コンテキストで大規模スキーマ対応、複雑クエリ精度高い

シナリオ5:低予算でのPoC・実験
目的:Text-to-SQLの可能性を検証
推奨:Vanna AI
理由:無料、オープンソース、学習データ次第で精度向上可能

導入時の注意点とベストプラクティス

Text-to-SQLツールの導入を成功させるには、いくつかの重要なポイントがあります。

スキーマ設計の重要性:Text-to-SQLの精度は、データベーススキーマの品質に大きく依存します。テーブル名、カラム名は説明的であるべきです。例えば、`tbl1`ではなく`customers`、`col3`ではなく`email_address`と命名します。また、外部キー制約を明示し、AIが結合関係を理解できるようにします。

ビジネス用語の辞書化:「MRR(Monthly Recurring Revenue)」「CAC(Customer Acquisition Cost)」などの業界用語やドメイン固有の概念を、ツールに学習させる必要があります。多くのツールは、用語辞書やサンプルクエリの登録機能を提供しています。

段階的な展開:いきなり全社展開せず、小規模なチームで試験運用します。頻繁な質問パターンを記録し、精度を検証してから拡大します。

ユーザー教育:「どんな質問でも答えてくれる魔法のツール」という過度な期待を避けるため、ツールの能力と限界を教育します。効果的な質問の仕方、曖昧さを避ける表現方法をトレーニングします。

人間のレビュー体制:特に重要な意思決定に使うクエリは、生成されたSQLを人間が検証する体制を整えます。AIの誤りを盲信せず、批判的に評価する文化を醸成します。

2026年以降の技術進化予測

Text-to-SQL技術は急速に進化しており、今後数年でさらなる改善が期待されます。第一に、「マルチモーダル対応」です。テキストだけでなく、音声入力、データビジュアライゼーションの直接操作などが統合されるでしょう。

第二に、「コンテキスト学習の強化」です。過去の質問履歴、ユーザーの役割、ビジネス目標を学習し、より精度の高いSQL生成が可能になります。第三に、「説明可能性の向上」です。「なぜこのSQLを生成したか」「他にどんな解釈があるか」を詳細に説明できるようになります。

第四に、「自動最適化」です。生成したSQLのパフォーマンスを自動分析し、インデックス追加やクエリ書き換えを提案する機能が期待されます。第五に、「リアルタイムデータ対応」です。ストリーミングデータや時系列データに対する複雑なクエリも、自然言語で生成できるようになるでしょう。

結論:自然言語で複雑なクエリは書けるか

本記事の冒頭の問い「自然言語で複雑なクエリは書けるか」に対する答えは、「条件付きでイエス」です。2026年1月現在のText-to-SQLツールは、シンプルから中程度の複雑度のクエリでは、実用レベルの精度を達成しています。Spider���ンチマークで80%超、実務的なクエリでも70%前後の成功率は、日常的なデータ分析には十分です。

しかし、「超複雑なクエリ」(多段ネストしたサブクエリ、高度なウィンドウ関数、複雑なビジネスロジック)では、まだ人間のSQLエキスパートに及びません。BIRD-SQLベンチマークで55%前後という数値は、実世界の難しさを反映しています。

重要な発見は、「ツール選択がユースケースに依存する」ことです。非技術者向けのセルフサービスBIならThoughtSpot Sage、エンタープライズ統合ならDatabricks Genie、カスタム開発ならGPT-4o、という具合に、目的に応じた最適解が存在します。万能なツールはまだ存在しません。

Text-to-SQLは、「SQLの民主化」を実現しつつあります。全ての従業員がデータにアクセスし、意思決定の質を高められる未来は、もはや空想ではありません。ただし、過度な期待は禁物です。ツールの能力と限界を正確に理解し、適切なガバナンスと人間のレビューを組み合わせることが、成功の鍵となります。

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