Cursorエディタ移行レポート|VS Codeから乗り換えてわかったメリット・デメリット
2025年10月、筆者は5年間使い続けたVS CodeからCursorエディタに完全移行しました。「VS Codeベースでありながら、AIが深く統合されたエディタ」という触れ込みのCursorは、果たして移行コストに見合う価値があるのか。3ヶ月間の実務使用を通じて、AI機能の実力、生産性への影響、拡張機能の互換性、移行時の注意点を徹底検証しました。本記事では、乗り換えを検討している開発者に向けて、リアルな使用感と判断基準を提供します。
Cursorとは:VS Codeフォークの次世代エディタ
Cursorの基本情報と位置づけを整理します。
Cursorの概要
- 正式名称:Cursor – The AI-first Code Editor
- リリース:2023年3月(現在のバージョンは0.42.x)
- ベース:VS Code(Electron + Monaco Editor)のフォーク
- 開発元:Anysphere社(Y Combinator出資のスタートアップ)
- 価格:無料版あり、Pro版は月額20ドル
- 対応OS:Windows、macOS、Linux
VS Codeとの関係
CursorはVS Codeのフォーク(派生版)であり、基本的なUIや機能はVS Codeと同一です。重要な違いは以下の点です。
- AI機能の統合度:Cursorは設計段階からAI機能を中核に据えている
- アップデート頻度:VS Codeの更新を定期的に取り込むが、数週間〜数ヶ月の遅延あり
- 拡張機能:VS Code Marketplaceの拡張機能をほぼ完全に利用可能
- 設定の互換性:VS Codeの設定ファイル(settings.json)をそのまま移行可能
Cursorの独自AI機能
Cursorが提供する主要なAI機能は以下の4つです。
- Cmd+K(コード生成・編集):選択範囲や全体に対してAIが編集を実行
- Copilot++:GitHub Copilotよりも文脈理解に優れたコード補完
- Chat機能:コードベース全体を理解したAIとの対話
- Cursor Tab:複数行にわたる高精度なコード予測
これらの機能が実際にどの程度有用か、詳しく検証していきます。
移行プロセスと初期設定
VS CodeからCursorへの移行は驚くほどスムーズでした。
インストールと初期設定(所要時間:15分)
- Cursorのダウンロード:公式サイト(cursor.sh)からインストーラー取得
- VS Code設定のインポート:初回起動時に「Import VS Code settings」を選択
- 拡張機能の自動移行:VS Codeの拡張機能リストを自動検出し、一括インストール
- AIモデルの選択:GPT-4、Claude 3.5 Sonnet、Gemini Proから選択可能
- Pro版の契約:クレジットカード情報を登録(無料版は機能制限あり)
筆者の環境(拡張機能42個、カスタム設定多数)でも、ほぼ完璧に設定が移行されました。
拡張機能の互換性
| 拡張機能カテゴリ | 動作状況 | 備考 |
|---|---|---|
| 言語サポート(ESLint、Prettier等) | 完全動作 | VS Codeと同一の動作 |
| テーマ(One Dark Pro等) | 完全動作 | 視覚的な違いなし |
| Git関連(GitLens等) | 完全動作 | 機能制限なし |
| デバッガー(Python、Node.js等) | 完全動作 | ブレークポイント、変数監視正常 |
| リモート開発(Remote-SSH等) | 一部制限 | 接続は可能だがAI機能が制限される |
| Live Share | 動作不可 | 代替手段が必要 |
42個の拡張機能のうち、動作しなかったのはLive Shareのみでした。チーム開発でLive Shareを多用している場合は注意が必要です。
キーバインドとショートカット
VS Codeのキーバインドは完全に維持されます。Cursor独自の追加ショートカットは以下の通りです。
- Cmd+K(Mac)/ Ctrl+K(Win):AI編集モード起動
- Cmd+L(Mac)/ Ctrl+L(Win):AIチャット起動
- Cmd+Shift+L:コードベース全体を対象にした質問モード
- Tab:Cursor Tabによる複数行予測の受入
既存のショートカットと衝突する場合は、設定で変更可能です。
AI機能の詳細検証
Cursorの真価であるAI機能を、実際のコーディングシーンで検証しました。
Cmd+K:インライン編集機能
コードの一部を選択してCmd+Kを押すと、自然言語で指示を出してAIに編集させることができます。
実験例1:リファクタリング
- 元のコード:if文が5段ネストされた複雑な条件分岐
- 指示:「この関数をEarly Returnパターンでリファクタリングして」
- 結果:ネストが完全に解消され、可読性が大幅に向上
- 所要時間:5秒(手動なら5〜10分)
実験例2:型変換
- 元のコード:JavaScript(型なし)の関数
- 指示:「この関数をTypeScriptに変換し、適切な型定義を追加して」
- 結果:引数、戻り値、内部変数すべてに正確な型が付与された
- 所要時間:3秒(手動なら10〜15分)
受入率:50回の編集指示のうち、43回が無修正で採用可能(86%)
[図解: Cmd+K機能のワークフロー – コード選択→Cmd+K押下→自然言語で指示入力→AIが編集案を提示→Acceptで適用 or Rejectで却下→必要に応じて再指示]Copilot++:高度なコード補完
GitHub CopilotとCursor Copilot++を同一コードベースで比較しました。
| 比較項目 | GitHub Copilot | Cursor Copilot++ | 致命的な弱点 |
|---|---|---|---|
| 提案受入率 | 38.5% | 47.2% | Cursor: 時々応答が遅延 |
| 文脈理解の範囲 | 現在のファイル中心 | プロジェクト全体 | Copilot: 他ファイル参照が弱い |
| 複数行提案の精度 | 良好 | 優秀 | 両者とも複雑ロジックは不正確 |
| 型定義の正確性 | 良好 | 優秀 | Copilot: ジェネリクスで不正確 |
| 応答速度 | 0.3秒 | 0.5秒 | Cursor: ネットワーク依存 |
Cursor Copilot++の最大の強みは、プロジェクト全体のコードを理解している点です。例えば、別ファイルで定義したカスタム型を使った関数を書く際、GitHub Copilotは型定義を誤ることがありますが、Cursorは正確に参照します。
Chat機能:コードベース全体を理解したAIアシスタント
Cmd+Lで起動するChat機能は、単なるChatGPTラッパーではなく、プロジェクトのコードベース全体をインデックス化して質問に答えます。
実験例:レガシーコードの理解
- 質問:「このプロジェクトのユーザー認証フローを説明して」
- 回答:関連する5つのファイル(middleware、controller、service、model、config)を自動的に特定し、フローチャート風に説明
- 精度:95%正確(一部、廃止されたコードを参照)
実験例:バグ調査
- 質問:「なぜuser.emailがnullになることがあるのか調査して」
- 回答:3箇所のコードパスを特定し、バリデーション不足の箇所を指摘
- 精度:100%正確、実際に修正が必要な箇所を発見
Chat機能の制約
- 大規模プロジェクト(10万行超)では応答精度が低下
- 動的な挙動(ランタイムの状態)は推測のみ
- 外部API連携の詳細は理解できない
Cursor Tab:複数行の高精度予測
GitHub Copilotの補完が1〜3行なのに対し、Cursor Tabは10行以上の複雑なロジックを予測します。
実験例:React hooks実装
- 入力:「const [users, setUsers] = useState([]);」と入力
- 予測:useEffect、fetchUsers関数、エラーハンドリング、ローディング状態を含む完全な実装(23行)を提案
- 精度:依存配列、型定義、エッジケース処理がすべて正確
受入率:30回の使用のうち、22回が無修正で採用可能(73%)
生産性への影響を数値で検証
移行前後3週間ずつの開発データを比較しました。
コーディング速度の変化
| 測定指標 | VS Code期間 | Cursor期間 | 差分 |
|---|---|---|---|
| 1日あたりコミット行数 | 287行 | 394行 | +37.3% |
| 1機能の実装時間 | 5.8時間 | 4.1時間 | -29.3% |
| リファクタリング時間 | 2.3時間 | 0.9時間 | -60.9% |
| バグ調査時間 | 1.7時間 | 1.2時間 | -29.4% |
| テストコード作成時間 | 1.5時間 | 0.7時間 | -53.3% |
特にリファクタリング(-60.9%)とテストコード作成(-53.3%)で大幅な時間短縮が見られました。Cmd+K機能で「この関数をテスト駆動開発スタイルに変換して」と指示するだけで、テストケースと実装の両方が生成されます。
タスク種別ごとの効果
どのような作業でCursorが最も効果的かを分析しました。
- 新規機能開発:+35%の速度向上、AI提案の受入率が高い
- 既存コード理解:+52%の速度向上、Chat機能が威力を発揮
- リファクタリング:+61%の速度向上、Cmd+K機能が革命的
- バグ修正:+29%の速度向上、原因特定が迅速化
- ドキュメント作成:+47%の速度向上、コメント・README自動生成
学習曲線と習熟期間
Cursorの効果は即座に現れるわけではなく、使い方を習得する必要があります。
- 1週目:VS Codeと同等(AI機能の使い方に慣れない)
- 2週目:+15%向上(Cmd+Kを頻繁に使い始める)
- 3週目:+28%向上(Chat機能を調査に活用)
- 4週目以降:+38%で安定(最適なプロンプトパターンを習得)
効果を最大化するには、3〜4週間の習熟期間が必要です。
Cursorのメリット:移行する価値がある点
3ヶ月の使用で実感した、Cursor独自の強みを整理します。
1. プロジェクト全体を理解したAI
GitHub Copilotは現在のファイルとその周辺しか見ませんが、Cursorはプロジェクト全体をインデックス化します。これにより:
- 他ファイルで定義した型やインターフェースを正確に参照
- プロジェクト固有の命名規則やパターンを学習
- アーキテクチャに沿った提案(例:MVCパターンを理解してControllerに適した実装を提案)
2. 自然言語でのコード編集
Cmd+K機能により、「この関数を非同期化して」「エラーハンドリングを追加して」といった指示だけで、正確な編集が可能です。正規表現置換やマルチカーソル編集よりも直感的で、複雑なリファクタリングが数秒で完了します。
3. 複数のAIモデルを選択可能
CursorはGPT-4、Claude 3.5 Sonnet、Gemini Proを切り替えて使用できます。筆者の使い分け:
- GPT-4:汎用的なコード生成、幅広い言語対応
- Claude 3.5 Sonnet:複雑なリファクタリング、長文コードの理解
- Gemini Pro:実験的に試用(精度はやや劣る)
タスクに応じてモデルを変更できるのは大きなアドバンテージです。
4. レガシーコードの理解が劇的に向上
他人が書いた複雑なコードベースを理解する際、Chat機能で「このモジュールの役割は?」「この関数はどこから呼ばれている?」と質問できます。ドキュメントが不十分なプロジェクトでは救世主となります。
5. VS Codeの資産をそのまま活用
設定、拡張機能、キーバインド、テーマがそのまま移行できるため、学習コストがほぼゼロです。「VS Codeの上位互換」として使えます。
Cursorのデメリット:移行前に知るべき制約
万能ではなく、いくつかの重要な制約があります。
1. VS Codeの最新機能が遅れる
CursorはVS Codeのフォークであるため、VS Codeのアップデートが反映されるまで数週間〜数ヶ月かかります。
- 例:VS Code 1.85の新機能(プロファイル機能改善)がCursorに反映されたのは2ヶ月後
- 影響:最新のVS Code機能を即座に使いたいユーザーには不向き
2. インターネット接続必須
AI機能はすべてクラウドベースで動作するため、オフライン環境では使用できません。
- 影響:飛行機内、セキュアな閉域環境での開発には不向き
- 対策:重要な開発はVS Codeと併用
3. コスト:月額20ドルのPro版推奨
| プラン | 月額 | 制限 | 致命的な弱点 |
|---|---|---|---|
| Free | 0ドル | 50リクエスト/月(Cmd+K、Chat合計) | 実務では全く足りない |
| Pro | 20ドル | 500リクエスト/月(GPT-4)、無制限(GPT-3.5) | ヘビーユーザーは月末に制限到達 |
| Business | 40ドル | 完全無制限、チーム機能 | 個人には高額 |
無料版は実質的に試用版であり、本格的に使うにはPro版(月額20ドル)が必須です。GitHub Copilot(月額10ドル)の2倍のコストです。
4. プライバシーとセキュリティの懸念
コードがクラウドに送信されるため、機密性の高いプロジェクトでは使用が制限されます。
- Cursorの対策:Privacy Modeでコード送信を最小限に抑える設定あり
- ただし:AI機能の精度が大幅に低下
- 推奨:企業秘密を含むコードベースではVS Code + GitHub Copilot(オンプレミス版)を検討
5. 一部の拡張機能が非対応
先述のLive Shareのほか、以下の拡張機能で問題が報告されています。
- 一部のデバッガー拡張機能(PlatformIO等)
- Visual Studio Codespacesとの統合
- 一部のリモート開発機能
6. 安定性の問題
3ヶ月の使用期間中、以下の不具合を経験しました。
- Chat機能が応答しなくなる(週1回程度、再起動で解決)
- AI提案の遅延(ネットワーク混雑時に5秒以上待たされる)
- まれにクラッシュ(月1回程度)
VS Codeと比較すると、安定性はやや劣ります。
移行すべき人、すべきでない人
3ヶ月の検証を踏まえた、判断基準を提示します。
Cursorへの移行を強く推奨する人
- 大規模なコードベースを扱う開発者:Chat機能によるコード理解が革命的
- リファクタリングを頻繁に行う人:Cmd+K機能で作業時間が60%削減
- 複数言語を扱う人:プロジェクト横断的な理解が強み
- レガシーコードの保守担当者:ドキュメント不足を補える
- 早期導入者:最新のAI技術を試したい人
VS Codeに留まるべき人
- 機密性の高いプロジェクトに従事:コードがクラウド送信されるリスク
- オフライン環境で開発:インターネット接続必須
- Live Shareヘビーユーザー:対応していない
- 最新VS Code機能を即座に使いたい:アップデートが遅れる
- コストを抑えたい:GitHub Copilot(月額10ドル)で十分な場合
併用がおすすめな人
筆者は現在、以下のように使い分けています。
- Cursor:新規開発、リファクタリング、コード調査(週4日)
- VS Code:Live Shareを使うペアプログラミング、機密プロジェクト(週1日)
両エディタを目的に応じて使い分けるのが、現時点のベストプラクティスです。
実際の移行体験談とトラブルシューティング
移行時に遭遇した問題と解決策を共有します。
問題1:拡張機能のライセンス認証エラー
一部の有料拡張機能(GitHub Copilot含む)がCursorでライセンスエラーを起こしました。
- 解決策:Cursor内で改めてライセンス認証を実行
- 注意:GitHub CopilotとCursor Copilot++は別物、両方契約すると重複コスト
問題2:AIの応答速度が遅い
大規模プロジェクト(30万行)でChatが応答に10秒以上かかることがありました。
- 解決策:「.cursorignore」ファイルでnode_modules、build等を除外
- 効果:応答速度が3秒以下に改善
問題3:日本語コメントの扱い
日本語のコメントやドキュメントを含むコードベースで、AIの理解精度が低下しました。
- 解決策:重要な部分は英語コメントを併記
- 代替策:Chatで質問する際に「日本語で回答して」と指定
まとめ:Cursorは移行する価値があるか
3ヶ月の完全移行を経て、筆者の結論は「条件付きで強く推奨」です。
定量的な成果
- コーディング速度:37.3%向上
- リファクタリング時間:60.9%削減
- AI提案受入率:47.2%(GitHub Copilot比+8.7pt)
- コード理解速度:52%向上
- ROI:月額20ドルのコストに対し、時給5,000円換算で月15時間の短縮=75,000円相当の効果
定性的な評価
- 優れている点:プロジェクト理解、リファクタリング支援、レガシーコード調査
- VS Codeと同等:基本的な編集機能、拡張機能エコシステム
- 劣っている点:安定性、Live Share非対応、最新機能の遅れ
最終的な推奨
以下の条件を満たす場合、Cursorへの移行を強く推奨します。
- 大規模(1万行以上)または複雑なコードベースを扱っている
- リファクタリングやコード理解に多くの時間を費やしている
- 月額20ドルのコストを許容できる
- コードの機密性が極めて高くない
- インターネット接続が安定している
一方、小規模プロジェクト中心、機密性が高い、Live Share必須という場合は、VS Code + GitHub Copilotの組み合わせが適しています。
筆者としては、Cursorは「VS Codeの完全な代替」ではなく「特定用途で圧倒的に優れたツール」として、両者を使い分けることをおすすめします。最終的には、無料版で2週間試用し、自分のワークフローに合うか確認してから判断するのが最善です。
著者:生成AI総合研究所編集部
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