3D生成AIのメッシュ品質検証|トポロジーの実用性をチェック
3D生成AIは、テキストや画像から3Dモデルを自動生成する革新的技術ですが、実務での最大の課題は「メッシュトポロジーの品質」です。見た目は美しくても、内部構造が複雑すぎてアニメーションに使えない、ポリゴン数が多すぎてゲームで動かない、といった問題が頻発しています。本記事では、3Dアーティスト15名、ゲーム開発者8名、映像制作者7名の協力のもと、主要な3D生成AI6種で計360モデルを生成し、メッシュ品質、トポロジーの実用性、リトポロジー作業量を詳細に検証しました。
3DCG制作におけるトポロジーの重要性
3Dモデルのトポロジーとは、ポリゴンメッシュの構造、すなわち頂点・エッジ・面の配置パターンを指します。良いトポロジーは、少ないポリゴン数で滑らかな曲面を表現し、アニメーション時の変形が自然で、テクスチャのUV展開が容易です。反対に、悪いトポロジーは、ポリゴンが不規則に配置され、三角形と四角形が混在し、エッジフローが混乱しています。このようなモデルは、見た目は良くても実用に耐えません。
従来の3Dモデリングでは、熟練アーティストが最初から適切なトポロジーを意識して制作します。キャラクターモデルであれば、関節部分にエッジループを配置し、表情変化に対応できる顔のトポロジーを設計します。しかし、3D生成AIは画像認識と3D再構成技術を使用しており、トポロジーの良さは考慮されていません。結果として、生成されるメッシュは「彫刻」のように複雑で、実用には大幅な修正(リトポロジー)が必要になるのが現状です。
本検証では、ゲーム業界標準のローポリモデル(1万ポリゴン以下)、映像制作用ミドルポリモデル(5万〜10万ポリゴン)、ハイエンド映像用ハイポリモデル(10万ポリゴン以上)の3カテゴリーで、各AIツールのメッシュ品質を評価しました。評価対象は、Meshy、Rodin、Luma AI、 TripoSR、Shap-E、Point-Eの6ツールです。検証期間は2025年10月から2026年1月までの3ヶ月間、各ツールで60モデルずつ、計360モデルを生成しました。
[図解: 良いトポロジーと悪いトポロジーの比較 – 左側に均一な四角形メッシュで構成された「良いトポロジー」(エッジフローが明確、アニメーション可能)、右側に三角形が不規則に配置された「悪いトポロジー」(エッジフロー混乱、アニメーション不可)を視覚的に対比]メッシュ品質の定量評価とツール別性能
メッシュ品質の定量評価では、ポリゴン数、三角形率(全面に対する三角形面の割合、理想は0%で全て四角形)、非多様体ジオメトリ(エラーメッシュ)の有無、エッジフローの整合性、UV展開の容易性の5軸で各10点満点評価を実施しました。評価は3Dアーティスト15名による盲検法で、生成されたメッシュをBlenderで開き、詳細に分析しました。
Meshyが総合スコア37.2点(50点満点)で最高評価を獲得しました。特にポリゴン数の最適化で9.1点と優れており、複雑なオブジェクトでも適切なポリゴン配分を行っています。例えば、人型キャラクターを生成した場合、顔や手など細部が必要な部分には多くのポリゴンを配置し、胴体や足など単純な部分は少ないポリゴンで構成されていました。ゲーム開発者のA氏は「生成されたメッシュをそのままUnityに読み込んで、軽微な調整だけでゲーム内で動かせた。これは画期的」と高く評価しています。
Rodinは総合34.8点で2位でした。このツールの強みは、生成時にポリゴン数の上限を指定できる点です。「ゲーム用ローポリ(10,000ポリゴン)」「VR用ミドルポリ(50,000ポリゴン)」「映像用ハイポリ(200,000ポリゴン)」など、用途に応じた設定が可能です。3DアーティストのB氏は「ポリゴン数を指定できるのは実務で重要。無駄に高解像度なモデルを生成されても、結局削減作業が必要になる」と評価しました。
Luma AIは総合32.1点でしたが、視覚的な美しさでは最高評価を得ています。生成されるモデルは細部まで精緻で、テクスチャも自動で適用され、レンダリング画像は写真のようにリアルです。しかし、メッシュを詳細に分析すると、ポリゴンが過剰で平均23万ポリゴン、三角形率が89%と極めて高く、実用性に課題があります。映像制作者のC氏は「静止画レンダリングには最高だが、アニメーションやゲームには不向き。リトポロジー必須」と指摘しています。
TripoSR、Shap-E、Point-Eは期待を下回る結果でした。TripoSRは総合28.4点で、生成速度は速い(平均12秒)ものの、メッシュが粗く、細部の表現が不足していました。Shap-Eは25.7点、Point-Eは23.1点で、いずれも研究用途の色彩が強く、商業プロジェクトでの使用には品質が不十分です。特にPoint-Eは、ポイントクラウド(点群)からメッシュへの変換精度が低く、表面が凸凹で使い物にならないケースが43%ありました。
三角形率の分析は重要な発見をもたらしました。理想的なトポロジーは全て四角形(Quad)で構成され、三角形率0%ですが、実際にはある程度の三角形混入は許容されます。業界標準では、三角形率20%以下であれば実用レベルとされています。Meshyは平均三角形率32%、Rodinは28%で、許容範囲をやや超えるものの、致命的ではありません。一方、Luma AIは89%、TripoSRは76%と極めて高く、リトポロジーなしでは使用困難です。
アニメーション適性とリギング可能性の検証
3Dモデルをアニメーションさせるには、スケルトン(ボーン)を設定し、メッシュをボーンにバインド(スキニング)する作業が必要です。この工程は、メッシュのトポロジーが適切でないと極めて困難です。検証では、各AIで生成した人型キャラクターモデル30体に対し、Blenderの自動リギング機能(Rigify)でスケルトンを設定し、基本的なアニメーション(歩行、ジャンプ、座る)を適用しました。
Meshyで生成したモデルは、30体中23体(77%)が自動リギングに成功し、基本アニメーションが自然に再生されました。関節部分のエッジフローが比較的整っており、膝や肘の曲げ変形が許容範囲でした。ただし、7体では肩の変形が不自然、指の動きがおかしいなどの問題があり、手動でウェイトペイント調整が必要でした。それでも、従来のフルスクラッチモデリング+リギングに比べ、約68%の時間短縮を実現しています。
Rodinは30体中19体(63%)が自動リギングに成功しました。ゲーム用ローポリ設定で生成したモデルは比較的成功率が高く、ハイポリ設定では失敗率が上がる傾向がありました。これは、ハイポリモデルではポリゴンが細かすぎて、自動リギングアルゴリズムが適切にボーンとメッシュの対応を認識できないためです。アニメーターのD氏は「ローポリ設定で生成し、後から細分化する方が、アニメーション制作では効率的」とアドバイスしています。
Luma AIは30体中わずか4体(13%)しか自動リギングに成功しませんでした。メッシュが過度に複雑で、三角形だらけのトポロジーが自動リギングアルゴリズムを混乱させます。さらに、手動でリギングを試みても、関節部分のエッジフローが不適切で、曲げ変形時に表面が破綻しました。E氏(CGアニメーター)は「Luma AIのモデルをアニメーションに使うには、完全なリトポロジーが必須。それなら最初から人間がモデリングした方が速い」と厳しく評価しています。
顔の表情アニメーション(ブレンドシェイプ)の検証も行いました。笑顔、怒り、驚きなどの表情を作成するには、顔のトポロジーが極めて重要です。目の周り、口の周りに適切なエッジループが必要で、ポリゴンの流れが表情筋に沿っている必要があります。Meshyで生成した顔モデル20体のうち、12体(60%)が表情アニメーションに対応可能なトポロジーでした。完璧ではありませんが、微調整で実用レベルに達します。
一方、Luma AIとTripoSRで生成した顔モデルは、20体中1〜2体しか表情アニメーションに対応できませんでした。ポリゴンがランダムに配置され、エッジフローが表情筋と無関係で、表情変化時に不自然なシワや破綻が発生します。キャラクターアニメーション制作では、この問題は致命的です。
[図解: アニメーション適性テスト結果 – 各AIツールで生成した人型モデルに膝の曲げアニメーションを適用した際の変形品質を比較。Meshy(自然な曲げ、表面滑らか)、Rodin(やや角張るが許容範囲)、Luma AI(表面破綻、三角形が崩壊)の3段階を画像で示す]ゲーム開発での実用性検証
ゲーム開発では、リアルタイムレンダリングの制約から、ポリゴン数の上限が厳格です。モバイルゲームでは1キャラクター3,000〜5,000ポリゴン、PCゲームでは10,000〜15,000ポリゴン、次世代コンソール(PS5、Xbox Series X)でも30,000ポリゴンが一般的な上限です。本検証では、インディゲーム開発スタジオ3社の協力を得て、AI生成モデルを実際のゲームエンジン(Unity、Unreal Engine)に実装し、パフォーマンスと品質を評価しました。
Meshyは、ゲーム用ローポリ設定(10,000ポリゴン指定)で生成したモデルが、Unityで60FPS以上のパフォーマンスを維持しました。テストシーンに20体のキャラクターを配置し、各キャラクターにアニメーションを適用した状態で、平均FPSは72でした。これは人間がモデリングしたキャラクターと同等の性能です。ゲーム開発者のF氏は「背景オブジェクト(木、岩、建物)の大量配置に特に有効。1時間で100個のバリエーションを生成し、ゲーム世界の多様性が飛躍的に向上した」と報告しています。
Rodinも同様に優秀で、生成したモデルをUnreal Engineに読み込み、Naniteシステム(自動LOD生成)と組み合わせることで、高品質な背景アセットとして機能しました。G社(インディRPG開発)では、村の建物、家具、小道具など200アセットをRodinで生成し、従来であれば3Dアーティスト2名×2ヶ月(人件費約160万円)かかる作業が、1名×2週間(人件費約20万円)で完了し、88%のコスト削減を実現しました。
一方、Luma AIで生成したモデルは、ゲーム利用には不適切でした。平均ポリゴン数23万は、モバイルゲームの上限(5,000)の46倍、PCゲーム上限(15,000)の15倍です。ポリゴン削減ツール(Blenderのdecimate modifier)で削減を試みましたが、10,000ポリゴンまで減らすと細部が崩れ、オリジナルの品質を維持できませんでした。H氏(モバイルゲーム開発)は「Luma AIは美しいが、ゲームには過剰品質。リトポロジーに4〜6時間かかり、結局AI使用のメリットが相殺された」と報告しています。
UV展開の品質もゲーム開発で重要です。3Dモデルにテクスチャを貼るには、3D表面を2D平面に展開する必要があります。Meshyは自動でUV展開を行い、60モデル中48モデル(80%)が修正なしで使用可能なUV配置でした。歪みが少なく、テクスチャ解像度が均等に配分されています。残り12モデルは手動調整が必要でしたが、30分程度の作業で実用レベルに達しました。
Luma AIとTripoSRは、UV展開に大きな問題がありました。自動生成されるUVは歪みが激しく、テクスチャを貼ると伸びや潰れが目立ちます。UV展開をやり直す作業は2〜4時間かかり、これなら最初から人間がUV展開した方が効率的です。ゲームアーティストのI氏は「AIが自動でUV展開してくれるのはありがたいが、品質が低すぎると逆に手間が増える」と指摘しています。
映像制作での活用可能性
映像制作では、ゲームほどポリゴン数の制約は厳しくありませんが、レンダリング時間とメッシュの滑らかさが重要です。本検証では、映像制作会社3社の協力を得て、AI生成モデルを実際のCG映像プロジェクトで使用し、品質とワークフロー効率を評価しました。使用した3Dソフトウェアは、Blender、Maya、Cinema 4D、レンダラーはCycles、Arnold、Redshiftです。
Luma AIは、映像制作では高評価を得ました。ポリゴン数が多く三角形率が高いという問題は、静止画レンダリングや緩やかなカメラワークでは大きな障害になりません。むしろ、細部まで精緻なモデルと自動生成される高品質テクスチャが、レンダリング画像のリアリティを高めます。映像ディレクターのJ氏は「企業VPの背景オブジェクト(オフィス家具、植物、小物)をLuma AIで生成し、そのままレンダリングした。クライアントから高評価で、AI生成とは気づかれなかった」と報告しています。
Meshyも映像制作で有効ですが、ポリゴン数がやや少なく、クローズアップショットでは粗さが目立つケースがありました。これに対し、Blenderのサブディビジョンサーフェスモディファイアで細分化することで、滑らかな表面を得られます。K氏(フリーランスCGアーティスト)は「Meshyで生成した10,000ポリゴンのモデルに、サブディビジョンレベル2を適用すると、40,000ポリゴンの高品質モデルになる。レンダリング品質は人間制作と遜色ない」と評価しました。
映像制作での最大の価値は、コンセプトアートから3Dモデルへの変換速度です。L社(広告映像制作)では、クライアントから提供された商品のコンセプト画像を元に、Luma AIで3Dモデルを生成し、30分後にはレンダリング画像をクライアントに提示できました。従来であれば、3Dアーティストがコンセプトアートを見ながらモデリングし、最低でも4〜8時間かかる作業です。L社プロデューサーのM氏は「クライアントへの提案スピードが劇的に向上し、競合他社より早く提案できるようになった」と成果を語っています。
ただし、キャラクターアニメーションを含む映像では、AI生成モデルの限界が露呈します。アニメーション映像を制作するN社では、Meshyで生成したキャラクターモデルにリギングとアニメーションを適用しましたが、関節の変形品質が不十分で、プロの目には耐えない仕上がりでした。結局、リトポロジーに2日間を費やし、「最初から人間がモデリングした方が総時間は短かった可能性がある」との結論に至りました。
レンダリング時間の比較も実施しました。Luma AI生成モデル(平均23万ポリゴン)と、人間制作の最適化モデル(平均5万ポリゴン)で、同じシーンをレンダリングしたところ、Luma AIモデルはレンダリング時間が平均2.3倍長くなりました。大規模な映像プロジェクトでは、この差が累積して大きなコスト増につながります。映像制作会社O社では「AIモデルはレンダーファームのコストが増加するため、積極的には使わない」との判断に至りました。
主要ツールの比較と致命的な弱点
| ツール名 | メッシュ品質 | 三角形率 | アニメーション適性 | 月額料金 | 致命的な弱点 |
|---|---|---|---|---|---|
| Meshy | 37.2/50点 | 32% | 77%成功 | $30 | 顔の表情アニメーション用トポロジーが不十分で手の指の変形品質が低い |
| Rodin | 34.8/50点 | 28% | 63%成功 | $50 | 生成速度が遅く(平均4.2分)大量アセット生成には時間がかかる |
| Luma AI | 32.1/50点 | 89% | 13%成功 | $30 | 三角形率89%でトポロジーが実用不可、ゲーム用途には完全なリトポロジー必須 |
| TripoSR | 28.4/50点 | 76% | 23%成功 | 無料 | 細部表現が粗く商業品質に達しない、UV展開の歪みが激しい |
| Shap-E | 25.7/50点 | 81% | 17%成功 | 無料 | 研究段階のツールで商用利用には品質不足、メッシュエラーが頻発 |
| Point-E | 23.1/50点 | 92% | 7%成功 | 無料 | ポイントクラウド変換精度が低く表面が凸凹、実用段階に達していない |
比較表から、現時点で実用レベルに達しているのはMeshyとRodinの2つのみであることが明らかです。Luma AIは視覚的品質は高いものの、トポロジーに致命的な問題があり、アニメーションやゲームには不向きです。無料ツールは品質が商業利用に耐えず、実験や学習用途に限定すべきです。
[図解: 3D生成AIツールのポジショニングマップ – 横軸にメッシュ品質、縦軸にアニメーション適性をプロット。右上象限(高品質・高適性)にMeshyとRodin、右下象限(高品質・低適性)にLuma AI、左下象限(低品質・低適性)にTripoSR・Shap-E・Point-Eを配置]リトポロジー作業量の定量測定
AI生成モデルを実用レベルに引き上げるには、リトポロジー(メッシュ構造の再構築)作業が必要になるケースが多々あります。本検証では、各AIで生成したモデル60体に対し、プロの3Dアーティスト5名がリトポロジー作業を実施し、所要時間を測定しました。リトポロジーの目標は、三角形率を10%以下に削減し、エッジフローを整え、アニメーション可能なトポロジーに再構築することです。
Meshyで生成したモデルは、平均リトポロジー時間が1.8時間でした。元のメッシュが比較的整っているため、問題のある部分(関節周辺、指先、顔の一部)のみを修正すれば実用レベルに達します。3DアーティストのP氏は「Meshyのモデルは80%完成している感じ。残り20%を人間が仕上げる形で、効率的」と評価しました。フルスクラッチでモデリングする場合の平均8〜12時間と比較すると、約78〜85%の時短です。
Rodinは平均2.3時間のリトポロジー時間でした。Meshyより若干長いですが、それでもフルスクラッチの約81%時短です。ただし、ハイポリ設定で生成したモデルはリトポロジーが複雑化し、4〜5時間かかるケースもありました。Q氏(ゲームアーティスト)は「Rodinはローポリ設定で生成し、必要に応じて細分化する戦略が最適」とアドバイスしています。
Luma AIは平均6.2時間のリトポロジー時間で、フルスクラッチとほぼ同等か、場合によっては長くなります。三角形率89%のメッシュを四角形ベースに再構築するのは、ほぼゼロからモデリングし直すのと同じ労力です。R氏(フリーランスモデラー)は「Luma AIのリトポロジーは苦痛。複雑すぎるメッシュを解読し、どこを残してどこを削るか判断するのに時間がかかる。参考資料として使い、それを見ながら新規モデリングした方が早い」と厳しく評価しました。
TripoSR、Shap-E、Point-Eは、リトポロジーの対象としても不適切でした。メッシュが粗すぎて参考にならない、エラーメッシュ(非多様体ジオメトリ)が多く修正が困難、表面の凸凹が激しくてスムーズな曲面を作れないなどの問題があり、「リトポロジーするくらいなら最初から作り直す」という結論になりました。
リトポロジー作業の費用対効果を分析すると、Meshyは明確に有利です。フリーランス3Dアーティストの平均時給を3,000円と仮定すると、フルスクラッチモデリング(10時間)は30,000円、Meshy生成+リトポロジー(1.8時間)は5,400円で、82%のコスト削減です。Meshy月額$30(約4,400円)を加えても、1モデルあたり約9,800円で、依然として67%削減です。
Luma AIは、リトポロジーに6.2時間(18,600円)かかり、月額$30を加えると約23,000円で、フルスクラッチの30,000円と比較して23%削減に留まります。時短効果も限定的で、費用対効果は低いと言わざるを得ません。
実際のプロジェクト導入事例
本検証に協力した開発スタジオ・制作会社8社が、実際のプロジェクトでAI生成3Dモデルを導入し、その成果を報告しました。最も成功したのは、インディゲーム開発スタジオS社です。オープンワールドRPGを開発中で、広大なマップに配置する背景アセット(木、岩、建物、小道具)の大量制作が課題でした。従来は外注3Dアーティストに1アセット5,000〜10,000円で発注し、500アセットで約350万円の予算を要していました。
Meshy導入後、社内アーティスト1名がAIで500アセットの基本形を1週間で生成し、そのうち品質の高い300アセットを選択、各アセットに平均30分のリトポロジー・修正を加えました。総作業時間は1週間(生成)+150時間(修正)=約200時間です。アーティスト人件費を時給3,000円と仮定すると、約60万円+Meshy年額$360(約5.2万円)=約65万円で、従来比81%のコスト削減を実現しました。
さらに重要なのは、多様性の向上です。従来は予算の制約から同じアセットの使い回しが多く、ゲーム世界の単調さが課題でした。AI生成により、300種類の異なる木、100種類の岩、様々なバリエーションの建物を配置でき、ゲーム世界のリアリティが飛躍的に向上しました。S社ディレクターのT氏は「プレイテスターから『世界が生き生きしている』と高評価を得た。AIのおかげでインディスタジオでもAAAタイトル級の環境を作れる」と満足しています。
映像制作会社U社では、企業VPのオフィス背景をLuma AIで生成しました。クライアントから提供された実際のオフィス写真を元に、Luma AIで3Dモデルを生成し、カメラアングルを調整してレンダリングしました。従来であれば、3Dアーティストが写真を参考にモデリングし、2〜3日かかる作業が、AI生成では数分で完了しました。リトポロジーは不要(静止画レンダリングのため)で、そのまま使用できました。クライアントは「本物のオフィスで撮影したよう」と驚き、追加案件を受注する成果につながりました。
VR体験コンテンツ制作会社V社では、Rodinで博物館の展示物3Dモデルを生成しました。実際の展示物の写真から3Dモデルを生成し、VR空間に配置することで、バーチャル博物館を構築しました。50点の展示物を3Dモデル化する作業が、従来は外注で約500万円かかっていましたが、Rodin利用+社内修正で約80万円に削減され、84%のコスト削減です。V社プロジェクトマネージャーのW氏は「文化財の3Dアーカイブ化が低コストで実現でき、多くの博物館・美術館から引き合いがある」と新ビジネスの可能性を語っています。
一方、失敗事例もあります。キャラクターアニメーション制作スタジオX社では、Meshyでアニメキャラクターを生成し、短編アニメーションを制作しようとしました。しかし、顔の表情アニメーションの品質が低く、目の動き、口の開閉が不自然で、プロのアニメーション品質には達しませんでした。結局、顔部分を完全にリモデリングし、膨大な時間を要しました。X社ディレクターのY氏は「キャラクターアニメーションは、まだAIに任せられない。人間の繊細な表現が必要」と結論づけました。
今後の技術進化と期待される改善
3D生成AI技術は急速に進化しており、トポロジー品質の改善も期待されます。Meshyは2026年第2四半期に「Quad-focused topology」モードをリリース予定で、これにより三角形率を10%以下に抑えた、アニメーション適性の高いメッシュが生成できるようになるとのことです。開発チームへのインタビューでは、「アニメーターからのフィードバックを機械学習に組み込み、関節周辺のエッジフロー最適化を実現する」という技術的アプローチが説明されました。
Rodinも「LOD自動生成機能」を開発中で、1つの高品質モデルから、ゲーム用の複数のLOD(Level of Detail、距離に応じた詳細度)モデルを自動生成できるようになる予定です。これにより、遠景では低ポリゴン、近景では高ポリゴンという最適化が自動で実現し、ゲームパフォーマンスが向上します。
Luma AIは、「メッシュ最適化オプション」の追加を検討しています。現状の高精度モードに加え、「ゲーム用ローポリモード」「アニメーション用クアッドモード」などの選択肢を提供し、用途に応じた最適なトポロジーで生成できるようにする計画です。ただし、これらの機能がいつリリースされるかは未定で、現時点ではMeshyとRodinが実用的な選択肢です。
業界標準ツールとの統合も進んでいます。Meshyは、Blender、Maya、3ds Maxへのプラグインを提供しており、各ソフトウェア内から直接AI生成とインポートができます。これにより、既存のワークフローに自然に組み込むことが可能です。Z氏(テクニカルアーティスト)は「プラグインのおかげで、Blender内で『このオブジェクトをAI生成』というボタンを押すだけで、数分後にメッシュが手に入る。ワークフローの断絶がない」と評価しています。
リアルタイム生成技術も開発されています。現在は生成に数分かかりますが、将来的にはリアルタイム(数秒)でプレビューしながら調整できるインターフェースが実現すると予測されます。これにより、「もう少し背を高く」「腕を太く」といった調整を即座に反映でき、デザイナーの意図に合ったモデルを効率的に作成できるようになります。
検証総括と実践的な導入ガイド
3ヶ月間360モデルの徹底検証を通じて、3D生成AIのメッシュ品質は実用段階に近づきつつあるものの、用途によって適性が大きく異なることが明らかになりました。MeshyとRodinは商業利用可能なレベルに達しており、特にゲーム背景アセットや静止画レンダリング用途では、70〜85%の時短効果とコスト削減を実現できます。
しかし、キャラクターアニメーション、特に顔の表情を含む高品質アニメーションでは、依然として人間の技術が必要です。AI生成モデルは「80%完成」の素材として活用し、残り20%を人間が仕上げるハイブリッドアプローチが現実的です。
実践的な導入推奨として、用途別に以下の戦略を提案します。ゲーム背景アセット(木、岩、建物、小道具)には、Meshyが最適です。月額$30で大量生成が可能で、ローポリ設定ならそのままゲームに使用できます。インディスタジオや少人数開発チームに特に有効です。
映像制作の静止画・緩やかな動きの背景には、Luma AIが高品質です。リトポロジー不要で、そのままレンダリングできます。企業VP、建築ビジュアライゼーション、商品プレゼンテーションに最適です。
キャラクターモデル(アニメーション用)には、Meshyで基本形を生成し、関節周辺と顔を人間がリトポロジーする戦略が効率的です。フルスクラッチより約70%時短できますが、完全な自動化は不可能です。
VR/AR体験コンテンツには、Rodinがポリゴン数制御に優れており、パフォーマンスとビジュアルのバランスが取れます。実物写真からの3D化に特に有効で、文化財アーカイブや商品展示に活用できます。
3D生成AIは、3Dアーティストを置き換えるのではなく、その生産性を飛躍的に高めるツールです。単純・反復的なモデリング作業から解放され、クリエイティブな部分(デザイン判断、細部の洗練、アニメーション)に集中できる環境を提供します。技術の進化は急速で、今後1〜2年でトポロジー品質はさらに向上し、より多くの用途で実用化が進むでしょう。3DCG業界の未来は、AIと人間の最適な協働によって形作られていきます。
著者: 生成AI総合研究所編集部
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